久保田藩佐竹氏が幕末まで治める
佐竹家の家紋「扇に月丸」
久保田藩は別名秋田藩と呼ばれ、関ヶ原の戦いで西軍に味方したことを理由に、常陸国から秋田へ減封となった佐竹氏が幕末まで治めた藩です。佐竹氏は源氏の流れを汲む名門の家柄で、秋田に移ってからは本家のほかに東西南北4つの分家格の家があり、藩政をサポートしました。そんな久保田藩の歴史を紐解いていきましょう。
林業に支えられた藩
久保田藩は、青森のヒバ、木曽の漆器と並ぶ日本三大美林の一つ、秋田杉に藩政を支えられた藩です。また、漆や蚕など米作以外の産業にも力を入れており、石高の割には収入があったといわれています。しかし、藩が開かれたときより、家臣団の知行地の割合が多く、開発した新田はすべて家臣の知行地にしてもよいという制度があったおかげで、新田を開発しても藩の実入りは増えず、藩の財政は早々に苦しくなりました。
また、古くから米作以外の産業が発展してきたお陰で久保田藩は商業がさかえ、商人達が力をつける一方、杉・漆・煙草・菜種などの換金作物を作っている農民達には売買に厳しい制限をかけ、重税を課しました。このいびつな税構造が久保田藩の発展を妨げたとも言われています。
代々の藩主達も、財政改革に頭を悩ませていました。久保田藩は初代藩主佐竹義宣以降、幕末まで佐竹氏が藩主を務め続けてきた珍しい藩です。佐竹本家が藩主となり、東西南北4つの分家格の家が家老を務めてきました。
5代藩主、佐竹義峯まで代々の藩主は苦しい財政を何とかしようと改革に着手しますが家老格の家の反対に遭ったり天災に襲われたりして、成果を上げられずにとん挫しました。5代藩主佐竹義峯は今までの藩主達の反動か倹約令を廃止して贅の限りを尽くし、さらに財政を悪化させたという不名誉な逸話が残っています。
7代目藩主佐竹義明は宝暦4年(1754年)に米の凶作対策として幕府の許可を得て銀札を発行します。しかし、米の値上げを見込んで米を買い込んだ商人達に銀札による米の買取を拒否されたため、銀札発行は結局失敗に終りました。
そしてその3年後の宝暦7年(1757年)、銀札発行をめぐって家中で推進派と反対派の争いが起きて騒動に発展します。これが、歴史に残る秋田騒動です。
もともと、銀札の発行によって藩内の経済の混乱が生じたところに、家老格の家が密室政治を行なっていたことに他の家臣団が反発、藩主佐竹義明を巻きこんだお家騒動となりました。
このお家騒動は脚色されて歌舞伎や落語の題材となり、全国に知られるようになったのです。
秋田騒動は詳しく記していくと膨大な記述になるので、興味のある方は詳しく調べてみてください。
現在も、秋田騒動を記した読み物としては秋田杉直物語などがあります。
8代目藩主佐竹義敦はそんな藩の混乱から目を背け、絵画に安らぎを求めて西洋画家として名を残しました。
9代目藩主佐竹義和の代から、秋田藩はロシアの進出を警戒した幕府から蝦夷地警備を命じられます。また、彼は政治にも有能で一時的にでも財政の建て直しにも性交しました。
10代目藩主佐竹義厚は、若くして藩主の座に就き名君と呼ばれた父の政治を踏襲しようとしましたが、凶作などの天災が相次いで発生するなどして財政は悪化の一途を辿ります。彼は失意のうちに35歳の若さでなくなります。
11代目藩主佐竹義睦は19歳で夭折、最後の藩主である佐竹義堯は、京都守護などの幕府の要職をつとめたものの、自身は病気に倒れ、国元は凶作で財政が混乱するなど大変困難の中、戊辰戦争が勃発します。
久保田藩は、最初奥羽越列藩同盟に与していましたが、それを離脱して新政府軍に参加したことにより、庄内藩・盛岡藩を中心とする列藩同盟軍と戦うことになります。
そのため、戊辰戦争中秋田で行なわれた戦いを、別途「秋田戦争」とも呼びます。
秋田戦争は、慶応4年7月11にはじまり、同年11月まで約3ヵ月続きました。
結果的に新政府軍が勝ったものの、久保田藩では藩土の3分の2が戦火にかかり、人家の四割が焼失するという大変な被害がでましたが、久保田城は戦火を免れました。
その後、佐竹義睦は藩知事を経て東京へ移住し、佐竹家は侯爵家になります。
久保田藩まとめ
久保田藩は産業に恵まれたものの、天災や凶作が多発し、藩政は常に危機的状況でした。そのため、藩主の多くが財政再建に取り組み失敗しています。その一方で、文化的な活動に取り組む藩主も多く、特に8代目藩主佐竹義敦は現在も作品が残るほど優れた西洋画家でありました。
現在も佐竹家は現存しており現秋田県知事の佐竹敬久氏は、佐竹北家の末裔で21代目にあたります。
- 執筆者 AYAME(ライター) 江戸時代を中心とした歴史大好きライターです。 趣味は史跡と寺社仏閣巡り、そして歴史小説の読書。 気になった場所があればどこにでも飛んでいきます。 最近は刀剣乱舞のヒットのおかげで刀剣の展示会が増えたことを密かに喜んでいます。