若林環七の通る緑豊かな住宅街を散歩
- 和さんぽとは 和装で各地をお散歩する企画です。各地の名所、名跡、スポット、食事処などご紹介します。
日本の旅侍×「和と人の交流ちとせ」の企画「和さんぽ」。今回は役者で殺陣の講師も務める島田勇矢さんと、東京都世田谷区の足としてお馴染み、東急電鉄世田谷線の駅「若林駅」の周辺をお散歩しました。
若林駅とその周辺
東急電鉄世田谷線の若林駅は、三軒茶屋駅から2駅・約3分で、距離にして約1km弱。通勤時には三軒茶屋駅まで歩いてしまう人がいるほど近いのが特徴です。三軒茶屋駅経由で渋谷駅まで約15分と立地もよいですよ。ちなみに「若林」の由来ははっきりしませんが、新田の古い表現、または開発の際に植林された若い木の並んでいるところを意味するものだそうです。
若林駅の特徴は、すぐ近くにある踏切。環七通りを唯一横切る踏切なのですが、警報機も遮断機もなく、信号に合わせて電車が停止する踏切なんです!昔はきちんと踏切があったそうですが、環七通りの交通量が増えるにつれ、渋滞の原因になったために現在の形になったのだとか。
駅の周りには閑静な住宅街が広がっており、静かなエリアでのんびり住みたい人におすすめの場所。2つの緑道も通っており、緑豊かな場所ですよ。


梅の名所でもある北野神社(若林天満宮)
東急世田谷線の若林駅から環七通りを散歩すること約3分、石の塀に囲まれ、通り沿いの少し高台に鎮座する「北野神社(若林天満宮)」が見えてきます。
神社の創建年代は分かっていませんが、応永8年(1401年)に武蔵国深大寺(現東京都調布市)の僧侶・花光坊長弁がここで連歌の法楽をしたと『長弁私案抄』に記録が残っているころから、それ以前の創建だとされています。
北野神社はもともと広い神社でしたが、環七通りができた際に境内の1/3以上が削られたことで、現在はコンパクトな境内となっています。
「北野」「天満宮」の名から分かる通り、御祭神は学問の神として有名な菅原道真公こと天神様。ご神体が素焼きの牛(石)に天神様が乗っているものであったことから「石天神」とも呼ばれ、虫歯によく聞くとされていたそうです。
天神様と言えば梅。菅原道真が太宰府に左遷になった際「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ(春を忘るなとも)」と歌を詠んだことは有名です。天神様を祀る神社には梅が植えられていることが多いですが、ここでも訪れた際は白色と紅色の梅が出迎えてくれました。


- 北野神社
- 東京都世田谷区若林3-34-16若林天満宮
常盤姫伝説ゆかりの地「駒留稲荷神社」
北野神社から環七通り沿いをさらに南に向かって散歩すること約10分、駒留陸橋を超えると北野神社と並んで若林の鎮守の神様として知られる「駒留稲荷神社」が見えてきます。
駒留稲荷神社は、このあたりの領主だった北条左近太郎入道成願が徳治3年(1308年)に社殿を造営し、駒留八幡と称したことが始まりだと言われています。ある時太郎入道の夢に八幡様が現れ、「祀るところは愛馬の白雪に聞け」とお告げがありました。お告げに従った太郎入道は翌日白雪に乗り、自由に歩き回らせたところ、白雪が立ち止まったのが現在の神社の場所だったそうです。これが神社の「駒留」の名前の由来になっています。
慶長14年(1609年)に神社の周辺が大久保氏の領地となると、駒留八幡神社はこの地の鎮守様となりました。明治6年(1873年)に村社と定められ、明治40年(1907年)に「駒留八幡宮」と改称。現在の「駒留八幡神社」の名になったのは戦後のことです。御祭神は応神天皇(八幡大神)で、明治時代に三軒茶屋にあった天照大神を祀る天祖神社を合祀しています。
この神社には境内社として厳島神社(常磐弁財天)がありますが、この神社にまつわる有名な伝説が「常盤姫伝説」です。戦国時代の奥沢城(東京都世田谷区奥沢7丁目・浄真寺周辺)の城主・大平出羽盛の娘の常盤姫は世田谷城主の吉良頼康に鷹狩の際に見初められ、側室になりました。常盤姫は頼康の寵愛を独占しますが、それを妬んだ他の側室達は常盤姫を妬み、頼康の部下と密通しているとあらぬ噂を流して常盤姫を陥れます。
やがて頼康から冷遇されるようになった常盤姫は無実の訴えと助けを求めた手紙を小さいころから可愛がっていた白鷺に結びつけて奥沢城に向かって放ちましたが、白鷺は途中で死亡。白鷺は発見した村人が丁寧に葬りました。一方の常盤姫は世田谷城を逃げ出しましたが、追手に捕らえられ、妊娠8ヶ月の状態で自害しました。
その後、噂は偽りだったことが分かり、常盤姫の名誉は回復して弁財天として祀られることに。当初は八幡神社前の池の中島に祀られていましたが、戦後になって八幡神社の境内末社、厳島神社として祀られるようになったのです。ちなみに生まれることなくして死んだ子どもは「若宮八幡」として、駒留八幡神社の相殿神になっています。
なお、常盤姫の死後、白鷺を埋めた場所に鷺が羽を広げたかのような白い花が咲き、人々はこれを「鷺草」と名付けて大切にしたそうです。鷺草は世田谷区の花に選ばれています。


- 駒留稲荷神社
- 東京都世田谷区上馬5-35-3
交差点にある「Junction STAND Cafe Bar」で一休み
駒留稲荷神社から約3分、環七通りを若林駅方面に少し戻ったところにあるカフェ&バーが「Junction STAND Cafe Bar」。若林交差点のそばにあるこちらのカフェでちょっと散歩の一休みさせていただきました。
Junction STAND Cafe Barは倉庫をリノベーションしたスタンディングタイプのおしゃれなカフェ。Junctionは「交差点」「合流点」といった意味がありますが、コンセプトは「街と人々をつなぐ交差点であり、合流点」なのだとか。
美容師兼ユーチューバーとして活躍する藤原朋哉(FUJIWARA LIFE)さんがプロデュースしており、多くのメディアにも取り上げられてられているお店です。一面ガラス張りなので店内は開放感たっぷり。外からも中からもフォトジェニックな空間です。中では洒落たスウェットなどのグッズも販売されています。
カフェタイムには自家焙煎した豆で入れる特製コーヒーに、チュロスやキャロットケーキなどの手作りの焼き菓子を用意。今回はブレンドコーヒーとスコーンをチョイスし、美味しくいただきました。ちなみにこちら、スタジオ貸しもやっていますよ。


- Junction STAND Cafe Bar
- 東京都世田谷区上馬5-39-20
UPOPO by touta inc.のポップな空間でナチュラルワインを楽しむ
若林駅に戻り、今度は北側をお散歩します。烏山川緑道を通り抜け、住宅地の中を歩いていると緑に囲まれた白い白い建物が見えてきます。それが昼からナチュラルワインが楽しめる酒屋&予約制バーの「UPOPO by touta inc.」です。
「UPOPO」という可愛らしい名前はアイヌ語で歌(坐り歌)という意味があるそうで、代表のユーゴさんが老若男女気軽に集える場になれば、という思いで名付けたのだとか。
店内はもとは町工場で、ピンクのソファにピンクのカウンターが特徴。ワインセラーもピンクで、とてもキュートな店内はまるでフランス映画に出てきそうな雰囲気でした。
昼から飲めるということで、カウンターで早速お酒をいただくことに。今回はフランスの自然派シードル(いわゆるりんごのスパークリングワイン)「Fils de Pomme」をいただきました。フルーティでさわやかな味わいに島田さんも大満足!「CUTE」なワイングラスもポイントです。


お店の奥はワインセラーになっており、ピンクの棚には海外のナチュラルワイン(自然派ワイン)がずらっと並びます。注目してほしいのがワインのエチケット(ラベル)。シンプルなものからユーモラスなイラストまでさまざまなものがあり、島田さんもじっくり見入っていました。
このほか、UPOPO by touta inc.ではセネガルドレスやユーゴさんの手掛ける布ナプキン「Pantyliners Organics」の販売なども実施しています。色あざやかなセネガルドレスに興味津々の島田さん、ドレスに囲まれつつ、もう一匹のお客さんであるかわいらしいワンちゃんに見守られながらお店を堪能しました。


- UPOPO by touta inc.
- 東京都世田谷区若林5-25-4フェスタレジデンス 1F
- 【今回の散歩コース】
- 東急世田谷線若林駅→北野神社→駒留稲荷神社→Junction STAND Cafe Bar→UPOPO by touta inc.
- 【今回訪れたスポット】
- 「北野神社」東京都世田谷区若林3-34-16若林天満宮
「駒留稲荷神社」東京都世田谷区上馬5-35-3
「Junction STAND Cafe Bar」東京都世田谷区上馬5-39-20
「UPOPO by touta inc.」東京都世田谷区若林5-25-4フェスタレジデンス 1F
- 出演
島田勇矢(俳優、殺陣)
俳優、殺陣。大阪府出身。特技は殺陣。剣道2段・弓道2段。
「アバランチ(フジテレビ)」「真犯人フラグ(日本テレビ)」「警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜(テレビ東京)」など映像出点多数。舞台「生贄姫-黄泉比良坂 -(Samurai Sword Performance Team)」をはじめ舞台出演も多数。

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- 執筆者 栗本奈央子(ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。