松陰神社前新旧入り混じった学問の街を散歩する

和さんぽ
和さんぽとは 和装で各地をお散歩する企画です。各地の名所、名跡、スポット、食事処などご紹介します。

日本の旅侍×「和と人の交流ちとせ」の企画「和さんぽ」。今回は役者で殺陣の講師も務める島田勇矢さんと、東京都世田谷区の足としてお馴染みな東急世田谷線の駅のなかから、吉田松陰ゆかりの「松陰神社前駅」の周辺をお散歩しました。

若者からも注目!松陰神社前駅とは

東急電鉄世田谷線の「松陰神社前駅」は、その名の通り吉田松陰を祀る「松陰神社」の近くにある駅です。駅の周辺には松陰神社通り商店街が続いており、飲食店から精肉専門店までさまざまな店が軒を連ねています。買い物や食事に困りませんよ!

また、松陰神社前駅周辺には国士舘大学や国士舘中・高等学校、保育園や幼稚園もあり、学生の街としても知られています。世田谷区役所に世田谷区民会館、世田谷区立世田谷図書館と、周辺に区の施設が多いのも特徴です。

このあたりは吉田松陰ゆかりの地としても知られており、2019年までは10月末に2日間にわたって「萩・世田谷幕末維新祭り」が開催され、幕末の志士と騎兵隊のパレードや幕末歴史講演会などが開催されていました。残念ながらお祭りは19年で終了していますが、2023年からは「松陰神社参道商店街 秋まつり」として、パレードや講演会などが引き継がれています。

吉田松陰を祀った「松陰神社」

松陰神社前駅から商店街を通って散歩すること約3分、大きな「松陰神社」の看板が見えてきました。幕末の思想家で数々の志士たちを教育した「松陰先生」こと吉田松陰を祀る松陰神社で、学問の神様として信仰されています。実はこの神社、幕末の志士の方々の痕跡が多々残る、幕末ファンにはたまらない神社なんです。

吉田松陰といえば、萩藩(長州藩、現山口県)出身の思想家で教育者として知られます。19歳で兵学師範として藩校明倫館に務めたのち、外国船の来航や天保13年(1842年)のアヘン戦争で清が英国に敗退したことなどに危機感を抱き、江戸で佐久間象山に学ぶとともに日本全国を遊学。嘉永6年(1853年)のペリー来航の際は黒船を見学し、翌年の再来航の際は米国船に乗り込み密航を企てますが失敗し、萩の野山獄に投獄されました。

釈放後は叔父の玉木文之進の跡を継ぐかたちで松下村塾を主宰し、幕末の志士たちに大きな影響を与えました。塾生の中には久坂玄瑞、高杉晋作、伊藤博文、山県有朋などの志士たちが多く存在しています。

そんな松陰ですが、幕府が安政5年(1858年)に日本側に不利な日米修好通商条約を孝明天皇の勅許なしで締結したことに激怒。幕府を批判し、老中・間部詮勝の襲撃を提言したことなどで藩により投獄されました。当時は大老・井伊直弼による「安政の大獄」の真っ最中で、松陰もその影響で萩から江戸に送られ、安政6年(1859年)に29歳の若さで処刑されています。

松陰の遺体は小塚原回向院(東京都荒川区南千住)に葬られましたが、死から4年後の文久3年(1863年)、高杉晋作や伊藤博文などにより、世田谷若林の地に改葬されました。そして明治15年(1882年)11月21日、墓のそばに松陰を祀る神社として松陰神社が創建されました。ちなみに神社の場所は以前長州藩主の別邸があったところです。

現在の社殿は昭和2年(1927年)から3年(1928年)にかけて造営されたもの。創建時の社殿は本殿の内陣にあります。

境内には松陰の墓碑に加え、安政の大獄で連座となった頼三樹三郎、小林民部をはじめとした幕末の志士たちの墓碑があります。実は長州征伐の際、幕府が一度墓を破壊していますが、明治元年(1868年)に木戸孝允らが修復しています。墓所の入り口には孝允が寄進した鳥居が今も残っています。

また、境内に並ぶ32基の石灯籠は、明治41年(1908年)に門下生などにより奉納されたもの。奉納者の名を見ると伊藤博文、山形有朋、井上薫などそうそうたるメンバーです。毛利元昭など旧長州藩毛利家の関係者の名前も見られます。

さらに境内には松陰の教育道場だった松下村塾を模した建物があります。これは山口県萩の松陰神社内にある松下村塾を模したもので、土日祝日には内部が見学できます。ちなみに萩の方は世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」に登録されています。

松陰神社
東京都世田谷区若林4-35-1

松陰神社の参道にある商店街をめぐる

駅から続く「松陰神社通り商店街」。明治45年(1912年)から続く老舗のパン屋さん「ニコラス精養堂」をはじめ、酒屋や精肉店、精米店、おでん種屋さんなど昔ながらのお店がずらりとならんでいます。

一方で、若者による新しいお店も次々とオープンしており、フォトジェニックなカフェにスイーツ店、おしゃれな雑貨屋さん、ギャラリーなどは若者を中心に人気を博しています。新旧入り混じった不思議な雰囲気の商店街は、歩いているだけでもとっても興味深いですよ。

松陰神社通り商店街
東京都世田谷区世田谷4-2-15

松陰神社前でハワイを感じる「HawaiianRestaurant ALOHABABY」

松陰神社通り商店街沿いにあるレストラン「HawaiianRestaurant ALOHABABY」へ。2025年1月で10周年を迎えたハワイ料理のお店で、木のぬくもりがあたたかい明るい雰囲気の店内の壁には、ハワイの州旗にハワイの島をかたどったオブジェが飾られています。

メニューはビフテキライスにロコモコ、チリドックライスボウル、アヒポキボウルなどハワイらしいメニューが並びます。今回島田さんは一番人気のビフテキライスをチョイス。ガーリックがよく効いた、ボリューミーな食べ応えのある一品に島田さんはとってもいい笑顔でした。ちなみに肉の枚数はダブルやトリプルもOKとのことです。さすがアメリカン…。

HawaiianRestaurant ALOHABAB
東京都世田谷区世田谷4-1-12

お向かいの「カンノンコーヒー 松陰神社前店」

ビフテキでお腹が一杯になった後は、お向かいにある「カンノンコーヒー 松陰神社前店」で珈琲を楽しむことに。こちらは名古屋を中心に全国に8店舗展開する「カンノンコーヒー」のお店で、珈琲や焼き菓子などが楽しめます。テイクアウトがメインですが、もちろん店内でも楽しめますよ。

時間のない時でもさっと立ち寄れる「町のコーヒースタンド」がコンセプトのカンノンコーヒーの豆は飲みやすいようにブレンドしているとのこと。エスプレッソやカフェラテに加え、ほうじ茶黒蜜ラテなど、コーヒーが苦手な人でも楽しめるメニューがあります。

自家製のスイーツは焼き菓子やプリンなどさまざま。期間限定のスイーツは人気なんだとか。今回島田さんはコーヒーを選択。外のベンチでリラックスしたカフェタイムを楽しみました。今回のお散歩はこれにて終了です。

カンノンコーヒー 松陰神社前店
東京都世田谷区若林3-17-4
【今回の散歩コース】
松陰神社前駅→松陰神社→松陰神社通り商店街→HawaiianRestaurant ALOHABABY→カンノンコーヒー 松陰神社前店
【今回訪れたスポット】
「松陰神社」東京都世田谷区若林4-35-1
「松陰神社通り商店街」東京都世田谷区世田谷4-2-15
「HawaiianRestaurant ALOHABAB」東京都世田谷区世田谷4-1-12
「カンノンコーヒー 松陰神社前店」東京都世田谷区若林3-17-4
島田勇矢
出演 島田勇矢(俳優、殺陣) 俳優、殺陣。大阪府出身。特技は殺陣。剣道2段・弓道2段。
「アバランチ(フジテレビ)」「真犯人フラグ(日本テレビ)」「警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜(テレビ東京)」など映像出点多数。舞台「生贄姫-黄泉比良坂 -(Samurai Sword Performance Team)」をはじめ舞台出演も多数。
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栗本奈央子
執筆者 (ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。