世田谷吉良家ゆかりの城跡をめぐる
- 和さんぽとは 和装で各地をお散歩する企画です。各地の名所、名跡、スポット、食事処などご紹介します。
日本の旅侍×「和と人の交流ちとせ」の企画「和さんぽ」。今回は役者で殺陣の講師も務める島田勇矢さんと、東京都世田谷区の足としてお馴染み、東急世田谷線の中心にある「世田谷駅」の周辺をお散歩しました。
世田谷駅とその周辺
東急電鉄世田谷線の「世田谷駅」は世田谷線の5番目の駅で、「上町駅」とともに世田谷線の真ん中に位置しています。駅周辺の地名は区の名前にもなっている「世田谷」です。
かつてこの地は「瀬田郷」と呼ばれていましたが、もとは「瀬戸」がなまって「瀬田」になったのだとか。そんな瀬田郷の谷の多い場所を「世田狭(かい)」と呼び、その「狭」が同義語の「谷」に代わって「瀬田谷」→「世田谷」になったそうです。
東急世田谷線はもともと明治40年(1907年)に開通した「玉川線(玉電)」の支線「下高井戸線」として大正14年(1925年)に開通。世田谷駅はそのころからある歴史ある駅です。駅の北側には世田谷区役所があり、区政の中心地となっています。駅の南側には円光院に大吉寺、広々とした世田谷霊園が広がっているのも特徴です。
駅北側の区役所西通り、南側の世田谷通りをはじめ、このあたりは比較的広い道が多くお散歩しやすいのが特徴です。世田谷通りのボロ市の際は込み合いますが、普段は落ち着いた雰囲気のエリアで、閑静な住宅街が広がっています。


武蔵吉良氏の本拠地・世田谷城跡
世田谷駅から散歩すること約10分、区役所西通りを北に向かい、左折して城山通りに入って歩くと緑が茂る丘が見えてきます。世田谷城跡と世田谷城址公園です。
世田谷城は南北朝時代、関東管領の足利基氏から武蔵吉良家の吉良治家が戦の手柄により武蔵国世田谷領を与えられ、築城したのが始まりだとされています。貞治5年(1366年)に築城を開始したとされていますが定かではありません。当時の書簡などの文献から、14世紀後半には吉良氏の領地になっていたことが分かっています。


世田谷城はその後200年以上にわたって吉良氏8代の居城として栄え、「吉良御所」「世田谷御所」等と呼ばれました。16世紀前半になって吉良頼康が北条氏綱の娘を正室に迎えたことで、吉良氏は北条氏と縁戚関係になります。
このため天正18年(1590年)、豊臣秀吉の小田原征伐の際、吉良氏は北条方につきましたが北条氏は敗退。当時の当主・吉良氏朝は上総国生実(現千葉県千葉市)に逃れ、世田谷城は豊臣方により接収され廃城となりました。なお、城壁の石材などは江戸城の改修の際に利用されたそうです。ちなみに吉良氏はその後徳川氏に仕え、世田谷で1120石の所領を得ています。
城の規模やどのような建物があったかは定かではありませんが、天守はなく、現在の豪徳寺付近に本丸があり、烏山川(烏山川緑道)を天然の堀としていたことが発掘調査などから分かっています。
昭和15年(1940年)、南東端の郭あたりを「世田谷城址公園」としてオープンし、市民たちの憩いの場になっています。実はここ、世田谷区唯一の歴史公園で東京都指定文化財にもなっています。
内部には土塁や空堀が残されており、結構アップダウンの激しい公園です。緑豊かななか、段差や階段を上り下りしていると割と疲れます…。あちこちにあるベンチで休憩しながら散策するのがおすすめです。なお、園内には石垣が築かれていますが、こちらは公園の整備にともない新設したものです。


- 世田谷城跡
- 東京都世田谷区豪徳寺2-14
公園前の隠れ家カフェ「ほんわか」でほっとする時間を
世田谷城址公園を散歩した後は、公園のすぐ近くにある城山通り沿いのカフェ「ほんわか」へ。ログハウスのような外観に、招き猫と和服が迎えてくれました。雑貨の販売や着付けなんかもしているみたいです。


なかはログハウスの木によるあたたかみのある雰囲気で、アンティークな家具が光ります。ロッジ風なのですが、おばあちゃんの家に帰ってきたみたいな、なんともいえない懐かしさを感じる内装でした。7、8席程度のコンパクトなカフェなのですっと入れて今回はラッキーでした!
ランチメニューが有名なようですが、今回はケーキセットをチョイス。コーヒーとロールケーキとともに、ゆっくりと流れる時間を堪能しました。


- ほんわか
- 東京都世田谷区豪徳寺2-15-24
鹿港で手作り台湾式の肉まんをはふはふ
東急世田谷線沿いをぶらぶら散歩するとおいしそうな香りに行列を発見したので並んでみることにしました。
お店の正体は手作り台湾肉包のお店「鹿港(ルーガン)」。肉包(ローパオ)というのは日本でいう肉まんで、鹿港のものは台湾の台中近くの港町「鹿港」にある超有名な老舗店「阿振肉包 振味珍(ゼンウェイゼン)」のレシピを使用しています。振味珍の肉包の味に感動した店主が何度も足を運んで修行させてもらい、日本で開業したお店です。門外不出の味を日本で食べれるのはここだけなのだとか!
並んでやっとゲットした肉包をほおばると、もっちりふわふわの皮にびっくり。ほのかな甘みのある皮はなんと4時間もじっくり発酵させて作っているのだとか。とにかく皮のおいしさに驚かされました…。
台湾油ねぎ入りのジューシーな肉餡とベストマッチでいくらでも食べられそうな味でした。無添加なのも体に優しくてありがたいですね。寒い中はふはふ食べる美味しい肉包も島田さんも思わず笑顔!いろいろな種類があるので次は別のものを…と思いつつ、お店をあとにしました。


- 鹿港
- 東京都世田谷区世田谷3-1-12
吉良氏の祈願寺だった「円光院」
鹿港から少し散歩するとお寺が並んでいるのが見えてきます。こちらが「円光院」と「大吉寺」で、大吉寺の裏には世田谷霊園が広がっています。
今回は円光院の方にお邪魔することに。正式名称は「大悲山明王寺円光院」で、吉良頼康により天正年間(1573年〜1592年)に吉良家の祈願寺として造られた、と伝えられています。ボロ市通りの入り口にあるお寺で、建立される前は世田谷城の外郭施設のひとつとして櫓があったと伝わっています。開基は盛尊(諸説あり)で、宗派は真言宗豊山派。本尊は不動明王で、境内には地蔵堂や閻魔堂などがあります。玉川八十八ヶ所霊場49番札所としても知られています。
ちなみにお隣の「大吉寺」こと護国山天照院大吉寺も吉良氏の祈願所で、創建年代は不明ですが真言宗の寺院として創建されたのち、浄土宗になっています。
円光院から世田谷駅はすぐそばです。今回は世田谷駅周辺をぶらり一周お散歩しました。


- 円光院
- 東京都世田谷区世田谷4-7-12
- 【今回の散歩コース】
- 東急世田谷線世田谷駅→世田谷城跡・世田谷城址公園→ほんわか→鹿港→円光院
- 【今回訪れたスポット】
- 「世田谷城跡」東京都世田谷区豪徳寺2-14
「ほんわか」東京都世田谷区豪徳寺2-15-24
「鹿港」東京都世田谷区世田谷3-1-12
「円光院」東京都世田谷区世田谷4-7-12
- 出演
島田勇矢(俳優、殺陣)
俳優、殺陣。大阪府出身。特技は殺陣。剣道2段・弓道2段。
「アバランチ(フジテレビ)」「真犯人フラグ(日本テレビ)」「警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜(テレビ東京)」など映像出点多数。舞台「生贄姫-黄泉比良坂 -(Samurai Sword Performance Team)」をはじめ舞台出演も多数。

- 執筆者 栗本奈央子(ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。