西太子堂緑が残る昔ながらの住宅街を散歩

和さんぽ
和さんぽとは 和装で各地をお散歩する企画です。各地の名所、名跡、スポット、食事処などご紹介します。

日本の旅侍×「和と人の交流ちとせ」の企画「和さんぽ」。今回は和と人の交流ちとせの代表理事で、剣舞や殺陣などのパフォーマーとして活躍する鏑木志織さんと一緒に、東京都世田谷区の足としてお馴染み、東急世田谷線の「西太子堂駅」の周辺をお散歩しました。

西太子堂とは

東急電鉄世田谷線の西太子堂駅は、三軒茶屋駅から東急世田谷線でわずか300m・2分の距離にある駅です。三軒茶屋で東急田園都市線に乗り換えれば渋谷まで約17分と、立地の良さが魅力的ですね。

西太子堂駅を出るとすぐにレトロな路地の姿。昭和の雰囲気が漂う昔ながらの住宅街が姿を現します。にぎやかな印象の三軒茶屋のそばにもかかわらず、ガラッと違った落ち着いた雰囲気の住宅街が広がっているので、降りたときはちょっとびっくりしました。さらに西太子堂駅エリアは世田谷通りと茶沢通りに囲まれており、2つの繁華街まで徒歩圏内。その日の気分でどっちで買い物するかを決められます。

西太子堂駅がある世田谷区太子堂の「太子堂」という地名は、聖徳太子ゆかりのものです。世田谷区によると、文禄4年(1595年)に大和の久米寺(現在の奈良県橿原市)の賢恵和尚が、十一面観世菩薩像と聖徳太子像を背負って関東を下っていた際、この地に一泊しました。そのとき夢に聖徳太子が現れ、「この地に霊地あり、円泉ヶ丘という。恒に霊泉湧き出ず。永くこれに安住せん。汝もともにとどまるべし」と告げられたとのこと。

このため賢恵和尚は本堂と聖徳太子堂を建てました。これが太子堂にある「円泉寺」(聖王山法明院円泉寺)で、寺を中心にこの地が栄えたことから、聖徳太子にちなんだ「太子堂」という地名になったそうです。

うさぎと猫で有名な「太子堂八幡神社」

まずは西太子堂駅の北側を散歩します。西太子堂駅から踏切を渡って道なりにまっすぐ歩くこと約4分、こんもりとしげる森と鳥居が見えてきます。太子堂の鎮守で少なくとも平安時代までさかのぼれる古社「太子堂八幡神社」です。

神社の創建は不明ですが、平安時代末期の永承6年(1052年)、奥州の豪族・安部氏の反乱(前九年の役)の平定に向かう源頼義・義家親子がこの地を訪れた際、神社に戦勝を祈願し、杯を交わして休憩したと伝わっています。このため、それ以前から神社があったのだと考えられています。

もともとは同地を開拓した先祖が守護神として祀られていたようですが、八幡神(誉田別尊=応神天皇)が源氏の守り神となったことで、源氏の勢力拡大とともに関東圏を中心に八幡神社が増加。この神社でも祀られるようになったようです。

神社の別当である円泉寺の記録には文禄年間(1592年~1596年)に八幡神社として建立されたとありますが、太子堂八幡神社によればちょうどそのころは豊臣秀吉が北条征伐で北条氏を滅ぼし、家臣団が太子堂で同地の開拓をスタートしたころなのだとか。このころに神社として整えられたため、記録に残ったと推察されています。

江戸時代、太子堂村は幕府の天領・彦根藩井伊家の大名領・旗本領に細分化されていましたが、神社のお祭りをもって心を一つにしていたのだとか。現在も地域の守り神として地元の人々から愛されています。境内の一部は児童公園となっており、子どもたちが楽しく遊んでいる姿が見られます。

実は以前、神社境内には「しあわせウサギ(ハッピーちゃん)」と呼ばれるうさぎが飼育されており、「うさぎの神社」としても良く知られていました。10年以上前に捨てられたうさぎを保護したことがきっかけになったうさぎの飼育ですが、昨年里親に譲渡されています。

太子堂八幡神社はかわいらしいお守りや御朱印も魅力。御朱印は月替わりで毎回異なるデザインのものがでるのですが、これが愛らしく、多くのファンを獲得しています。また、看板猫「ふくちゃん」にちなみ、毎月29日(2月は22日)は「ふくのひ」として猫の御朱印もいただけるんです。猫好きにたまらない神社としてひそかな人気を集めています。猫や犬の形をした絵馬もありますよ。

このほか、社務所にはかわいらしい十二支や招き猫のおみくじも。持ち帰って飾りたくなります!鏑木さんも楽しそうに眺めていました。

さらに境内には樹齢500年のクスノキや七福神の弁財天を祀る弁天社、稲荷神社などもあり、見どころたっぷり。ゆっくり散策した鏑木さん、しっかりパワーチャージができたようです。

太子堂八幡神社
東京都世田谷区太子堂5-23-4

緑豊かな「烏山川緑道」をちょっぴり散策

続いて鏑木さんが散歩したのは、世田谷区船橋の千歳温泉プールあたりから三宿の北沢川緑道との合流点まで約7kmにわたって続く烏山川緑道です。もとは昭和40年代ころ、烏山川を下水道幹線として利用するため埋め立てた際、その上を遊歩道として整備されました。

太子堂八幡神社の近くも通っていて、緑に囲まれたなかをのんびりお散歩するのはとっても楽しいですよ!道も整備されており、フラットなので歩きやすいのも特徴です。

ちなみにこの緑道、世田谷城址や松陰神社などの神社仏閣や史跡沿いにあるのも特徴だったりします。今回は一部分だけをお散歩しましたが、緑道を踏破するのも楽しそうですね!

珈琲専門店「Obscura Mart」で一息

西太子堂駅まで散歩して、今後は駅の南側を散策します。世田谷通りまで出ると、通り沿いに「三軒茶屋ですべての豆を焙煎している珈琲屋」との看板を発見!面白そうなので入ってみることにしました。

「Obscura Mart」はガラス張りの明るい雰囲気の珈琲専門店。世田谷区を中心に展開する「OBSCURA」シリーズの1店舗で、焙煎したての珈琲豆や珈琲器具、珈琲ギフトなどを販売しているお店です。ガラス越しの店内はとってもおしゃれな雰囲気。撮影させていただきましたが雑誌の表紙のような写真が撮影できました!

Obscura Martはカフェメインではないのですが、きちんとコーヒーを堪能できるドリンクメニューがそろっています。今回、鏑木さんはカフェラテを注文。外にベンチがあるので、のんびり日向ぼっこしながら香り豊かなカフェラテをいただきました。ミルクが優しい味わいで、疲れた体にしみ渡りました…。

Obscura Mart
東京都世田谷区若林1-2-1
【今回の散歩コース】
西太子堂駅→太子堂八幡神社→烏山川緑道→Obscura Mart
【今回訪れたスポット】
「太子堂八幡神社」東京都世田谷区太子堂5-23-4
「Obscura Mart」東京都世田谷区若林1-2-1
鏑木志織
出演 鏑木志織(剣舞・創作舞踊・殺陣) NPO法人「和と人の交流ちとせ」代表理事。特技は剣舞・創作舞踊・殺陣。ミス江戸NADESHIKO2019準グランプリ受賞。JAPAN EXPO in Paris演舞ほか、JAPANIMANGA Night 2018(スイス)、KANAGAWA Festival in Hanoii 2019(ベトナム)等海外公演の実績あり。映画キングダム2にも関わる。Instagramフォロワー数1.8万人。
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栗本奈央子
執筆者 (ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。