三軒茶屋江戸時代から続く繁華街で昭和の香りを楽しみ散歩
- 和さんぽとは 和装で各地をお散歩する企画です。各地の名所、名跡、スポット、食事処などご紹介します。
日本の旅侍×「和と人の交流ちとせ」の企画「和さんぽ」。今回は和と人の交流ちとせの代表理事で、剣舞や殺陣などのパフォーマーとして活躍する鏑木志織さんと一緒に、東京都世田谷区東部の三軒茶屋をお散歩しました。
三軒茶屋ってどんな街?名の由来は
三軒茶屋エリアは東急田園都市線・東急世田谷線「三軒茶屋駅」を中心としたエリアです。田園都市線を使えば渋谷駅まではわずか2駅5分とアクセスの良さが魅力で、現在も「住みたい街」ランキングにランクインする人気の街です。
三軒茶屋の地名の由来は江戸時代までさかのぼります。世田谷区には江戸時代、相模国大山(現神奈川県伊勢原市)にお参りする「大山詣」に向かうための大山道(現在の玉川通り、国道246号)が通っていますが、三軒茶屋は大山道と鎌倉方面につながる登戸道(世田谷通り)との分岐点で、交通の要所でした。
そこには「お休み処」として三軒の茶屋があり、それもあっていつしかこのあたりを三軒茶屋と呼ぶようになったのだとか。ちなみに三軒の茶屋のうち、一軒は現存。もとは「田中屋」という旅籠屋でしたが、現在は「田中屋陶苑」として陶器店に商売替えしています。
関東大震災後は都心から移り住む人が増え、商店街などが発展。1990年代から再開発が始まり、1996年には三軒茶屋のシンボルとして親しまれている「キャロットタワー」がオープンしています。周辺には昭和の香りが残る「エコー仲見世商店街」や新旧さまざまな店が並ぶ三軒茶屋銀座商店街など、多くの商店街があり、人々でにぎわっています。チェーン店を含め多くの飲食店があるほか、24時間スーパーもあり食事や買い物には困らない便利さも魅力の一つです。現在も再開発は続いており、今後の動きが見逃せません。
人参色のランドマーク「キャロットタワー」
今回の和さんぽはまず、シンボリックな「キャロットタワー」から。三軒茶屋周辺の再開発により、1996年オープンした地下5階・地上27階建ての複合ビルです。名前は公募で、中学生が「外壁の色がにんじんの色に見える」ことから提案。「ビタミンたっぷりで元気の出る名前は、三軒茶屋の将来の発展にふさわしい」と1488通のなかから選ばれました。
高層階はオフィス部分で、低層階にはカフェやレストランといった飲食店からスーパーや雑貨屋などの小売店まで、さまざまなお店が入居しています。2階には世田谷区役所の出張窓口もあり便利。劇場「世田谷パブリックシアター」まであります。
共用部として最上階の26階は「スカイキャロット展望ロビー」で、地上124mから東京を一望できます。東京タワーや東京スカイツリーに加え、天候次第では富士山がみえることもあるのだとか!夜景は夜景観光コンベンション・ビューローの「日本夜景遺産」にも認定されています。そんな景色を入場無料で楽しめるという…!
ちなみに同じ階にはホテルオークラの「オークラレストランスカイキャロット」があり、オークラの伝統的な中国・西欧料理を堪能できます。
- キャロットタワー
- 東京都世田谷区太子堂4-1-1
ディープな雰囲気の飲み屋の聖地「三角地帯」
そんなキャロットタワーからまずお散歩したのが「三角地帯」と呼ばれる昭和の雰囲気が漂う地域。玉川通りと世田谷通りに挟まれた三角形の地域で、再開発が始まっているものの、今でも古い建物が残るスポットです。
このあたりは飲み屋や食事処がみっしりとあり、夜は特ににぎわいます。エコー仲見世商店街もこのあたりですよ。戦後は闇市がたった場所だそうで、雑多で昭和らしい雰囲気が魅力です。レトロな写真をとるのにもおすすめです。
三角地帯のなかは細かく分かれた狭い路地に小さなお店がずらっと並んでおり、探検気分でのんびり散策するのがおすすめです。古いお店が多い印象ですが、最近では新しいお店も増えてきたのだとか。お気に入りのお店を探したり、常連さんが「自分の店」に通ったり…今日も多くの人が訪れています。
- 三軒茶屋三角地帯
- 東京都世田谷区三軒茶屋2-13-9
「目青不動」として知られる教学院
三角地帯からキャロットタワーの横を抜けて北へ散歩すること約3分、緑に囲まれた場所が見えてきました。「竹園山最勝寺教学院」、通称「目青不動」です。
目青不動は天台宗の寺院で、創建は慶長9年(1604年)に玄応和尚によるもの。もともと江戸城内紅葉山付近にあったところ、移転を繰り返し、明治41年(1908年)に現在の地に移転したそうです。
「江戸五色不動」「関東三十六不動十六番札所」として知られており、本尊は阿弥陀如来像。目青不動明王は不動堂(閻魔堂)に祀られていますが秘仏のため非公開で、前立である青銅製の不動明王像が公開されています。
江戸五色不動とは五行でおなじみ白黒赤青黄の色にまつわる由来や伝説が残るお不動様のこと。不動尊の目の色などから目+色の名前の通称で知られています。目黒区にある目黒不動尊(泰叡山護國院 瀧泉寺)なんかが有名ですよね。
伝説では徳川家光が江戸鎮護のために四神相応の土地に不動尊を割り当てたのだとか。つまり、東の青龍(青)、南の朱雀(赤)、西の白虎(白)、北の玄武(黒)に中央の黄龍(黄)というわけです。ちなみに目黄不動は数か所あるのだとか…どうやら明治時代から「五色不動」と呼ばれるようになったのだそうで、この辺りははっきりしていません。
目青不動の場合、もとは港区麻布谷町にあった正善寺(勧行寺)の本尊だったところ、正善寺の廃寺に伴い、当時青山南町にあった教学院にやってきたのだとか。このため青山にちなみ「目青」という名前がついています。
境内は緑に覆われており、三軒茶屋駅前の喧騒と離れた静謐な雰囲気が漂います。樹齢100年以上というチシャノキは世田谷区の銘木百選にも選ばれています。訪れたときは紅葉が美しく色づいていました。
- 教学院(目青不動)
- 東京都世田谷区太子堂4-15-1
どこか懐かしい老舗の洋菓子店「アーモンド洋菓子店 」
目青不動から散歩すること約5分、茶沢通り沿いにある洋菓子店が「アーモンド洋菓子店」の本店です。1969年の老舗の洋菓子店はこれまでテレビをはじめ数々のメディアで紹介されてきました。クラッシックなショートケーキに昔ながらのモンブランなど、さまざまなケーキが手ごろな値段で販売されています。
ケーキに加え、創業以来変わらない味というソフトクリームに、スイスで修業したこだわりの最高級生チョコも人気です。生チョコは世田谷みやげの銀賞も受賞しています。
気さくな雰囲気の店主の米田さんからお菓子の秘話などを伺いつつ、楽しそうにお菓子を選ぶ鏑木さん。今回選んだのはシュークリーム!「カスタードたっぷりの大サービス品」との説明があるとおり、濃厚なカスタードクリームがシュー生地のなかにみっしり入っており、とっても食べ応えがありました♪
- アーモンド洋菓子店 本店
- 東京都世田谷区太子堂3-14-1千葉ビル
- 【今回の散歩コース】
- 三軒茶屋駅→キャロットタワー→三角地帯→教学院(目青不動)→アーモンド洋菓子店
- 【今回訪れたスポット】
- 「キャロットタワー」東京都世田谷区太子堂4-1-1
「三軒茶屋三角地帯」東京都世田谷区三軒茶屋2-13-9
「教学院(目青不動)」東京都世田谷区太子堂4-15-1
「アーモンド洋菓子店 本店」東京都世田谷区太子堂3-14-1千葉ビル
- 出演 鏑木志織(剣舞・創作舞踊・殺陣) NPO法人「和と人の交流ちとせ」代表理事。特技は剣舞・創作舞踊・殺陣。ミス江戸NADESHIKO2019準グランプリ受賞。JAPAN EXPO in Paris演舞ほか、JAPANIMANGA Night 2018(スイス)、KANAGAWA Festival in Hanoii 2019(ベトナム)等海外公演の実績あり。映画キングダム2にも関わる。Instagramフォロワー数1.8万人。
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- 執筆者 栗本奈央子(ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。