山下・豪徳寺招き猫ゆかりの寺がある街を散歩

和さんぽ
和さんぽとは 和装で各地をお散歩する企画です。各地の名所、名跡、スポット、食事処などご紹介します。

日本の旅侍×「和と人の交流ちとせ」の企画「和さんぽ」。今回はモデルや役者として活躍中の森仲ジョウさんと一緒に、世田谷区の梅丘地区、山下・豪徳寺駅周辺をお散歩しました。

山下駅と豪徳寺駅

東京都世田谷区のほぼ中央にある梅丘地区は、梅丘、豪徳寺、代田の3つの町からなり、閑静な住宅地と緑の多い自然豊かな地区として知られています。なかでも東急世田谷線の山下駅と小田急小田原線の豪徳寺という二つの駅が近接している豪徳寺町は、招き猫の発祥の寺として知られる「豪徳寺」からその名がつけられたことで知られています。

山下駅は大正14年(1925年)、豪徳寺駅は昭和2年(1927年)に開設されており、すぐ目の前にお互いの駅が見える距離なので乗り換えはとっても便利。渋谷や新宿へのアクセスの良さが魅力です。両駅の周辺には商店街が広がっておりややにぎやかですが、少し離れると閑静な住宅街があり、落ち着いた雰囲気です。

2つの商店街が広がる街

2つの駅が交差する位置にあるのが山下商店街。昭和レトロな雰囲気が残る地域密着型の商店街で、昭和26年(1951年)に発足しました。飲食店が多く、大手チェーン店から個人営業のカフェまでさまざまな店が軒を連ねます。小さな和菓子屋や果物店、美容室などもあり、のんびりとしたどこか懐かしい空気が漂う商店街です。

豪徳寺駅の南側に広がるのが豪徳寺商店街。もとは豪徳寺に向かう参道だった商店街で、こちらも昔ながらの生鮮食品の店などがあり、懐かしさを感じながらゆったりとお散歩できます。

両商店街ともあちらこちらに招き猫の姿が見られます。豪徳寺といえば招き猫ですから、商店街も猫押し!猫の看板に猫グッズと、猫好きにはたまらない散歩しがいがる商店街です。

吉良氏ゆかりの杓子稲荷神社

山下駅から山下商店街と豪徳寺商店街を通過して散歩すること約10分。住宅街のなかにそびえる大きな松を目印に歩くと、真っ赤な鳥居が見えてきます。室町時代から続く杓子稲荷神社です。

杓子稲荷神社はもとは吉良治家が世田谷城を築城した際、城の鬼門守護のために伏見稲荷を招請して建てた神社だと伝えられています。天正18年(1590年)、豊臣秀吉の小田原征伐で吉良氏は婚族だった北条氏とともに秀吉に敗れます。吉良氏の所領は没収され、世田谷城は廃城になりました。神社もその際衰退しますが、近隣住民たちが再建し、現在に至ります。

ちなみに吉良氏は後に徳川家の家臣となり、関東に入国した家康から世田谷1120石を与えられましたが、後に返上しています。

杓子稲荷神社のご祭神は倉稲魂命で、五穀豊穣や商売繁盛等のご利益があります。「杓子」稲荷の由来は杓子で食物をすくうのは「救う」に通じ、病気や災難をはらい福徳円満、長寿開運、万福将来の象徴なのだとか。吉良氏に病弱な子どもがおり、乳母が「杓子が食べ物をあまさず救うように、若君を救って強くしてください」と神社に杓子を捧げて祈願したことからその名がついたようです。このため、病気平癒のためにお参りする人もいたのだとか。現在は杓子が絵馬がわりに奉納されています。

このほか神社の鳥居の右には「不老長寿の松」とされるクロマツがあり、なんと江戸時代後期からある樹齢数百年の松なんだとか。現在は世田谷区の保存樹木に指定され保護されています。背の高い一本松は神社のシンボルのよう。森仲さんも感慨深げに眺めていました。

杓子稲荷神社
東京都世田谷区梅丘1-60-7

世田谷城跡に建つ招き猫発祥の寺・豪徳寺

神社から閑静な住宅街を散歩すること約7分、石門を超え、松並木の参道をのんびり歩くと大谿山 豪徳寺の山門が見えてきます。豪徳寺は以前「宮の坂」の回でも訪れた、招き猫発祥の地として有名な井伊家ゆかりのお寺です。もとは文明12年(1480年)に世田谷城主の吉良政忠が伯母のために置いた「弘徳院」という庵です。当初は臨済宗でしたが天正12年(1584年)に曹洞宗になりました。豪徳寺の周辺は廃城となった世田谷城の跡地でもあり、松並木の参道から少しそれると「世田谷城址公園」があり、空堀や土塁の跡が残されています。

寛永10年(1633年)年に世田谷は彦根藩の飛び地の所領「世田谷領」になり、その際第2代彦根藩主の井伊直孝が弘徳院を江戸菩提寺に定めて伽藍を整備しました。万治2年(1659年)に直孝が没すると、その法号である「久昌院殿豪徳天英大居士」に因んで「豪徳寺」と改称されました。井伊家の江戸における菩提寺らしく、寺内には歴代の藩主や正室たちの墓が並ぶ墓所があり、一般公開されています。

豪徳寺の招き猫伝説は井伊直孝にまつわるもの。鷹狩の帰りにこの地を通りかかった直孝は、弘徳院の前にいた白い猫に手招きされ、寺に立ち寄ります。すると突然雷雨が発生!猫のおかげで濡れずにすみ、和尚との話も楽しめたことで、直孝は弘徳院を支援して菩提寺にすることを決めたのです。

豪徳寺の発展のきっかけとなった白猫を寺では「招福猫児(まねきねこ)」と呼んで大切にし、その姿を模した置物が作られるようになりました。寺には猫を祀るための「招福殿」が建てられており、願いが叶うと招き猫を奉納することから、併設の奉納所には1000体以上の招き猫がずらりと並んでいます。訪れた日も多くの人が猫を奉納していました。

ちなみに大徳寺の招き猫は小判を持たず、右手をあげて人を招いていますが、これは人を招いて「縁」をもたらすという意味から。縁を生かして福を得られるかは自分次第、報恩感謝の気持ちがあれば自然と福が訪れる、という教えに基づいています。

訪れた12月はちょうど紅葉の季節。参道をはじめ、寺内では美しい紅葉が見ごろを迎えていました。仏殿に続く道にある黒々とした常香炉とのコントラストも美しかったですよ。ちなみに常香炉には井伊家の家紋「彦根橘」が金色で描かれています。

豪徳寺
東京都世田谷区豪徳寺2-24-7

AMAZING COFFEE TOKYO GOTOKUJIで招き猫ラテと一休み

豪徳寺にお参りした後は、豪徳寺駅近くの「AMAZING COFFEE TOKYO GOTOKUJI」まで散歩して一休み。鮮やかなターコイズブルーが特徴的なお店で、電車をコンセプトにデザインされています。

実はこちら、EXILE TETSUYAさんがプロデュースされている「AMAZING COFFEE」の焙煎所兼カフェで、2024年7月にオープンしたばかり。中は食堂車を思わせるデザインで、椅子もレトロでおしゃれでした。

名物は招き猫にちなんだ「招き猫ラテ」とのことで、さっそくオーダーしました。招き猫ラテはアイスとホットがありますが、今回はアイスをチョイス。バニラアイスがちょこんと乗っているのですが、チョコを使った猫耳がとってもキュート。肉球マドラーもついていて森仲さんも「かわいい!」とご機嫌でした。きなこに黒糖が入った和テイストな味わいは疲れた体にしみわたります。

一緒にオーダーしたハニーチーズのスペシャルホットサンドははちみつがトロっとかかったホットサンド。アツアツのとろけるチーズと冷たいバニラアイス、はちみつに生クリームは最高の組み合わせでした!

AMAZING COFFEE TOKYO GOTOKUJI
東京都世田谷区豪徳寺1-23-14メゾン園田
【今回の散歩コース】
山下駅→山下商店街・豪徳寺商店街→杓子稲荷神社→豪徳寺→AMAZING COFFEE TOKYO GOTOKUJI
【今回訪れたスポット】
「杓子稲荷神社」東京都世田谷区梅丘1-60-7
「豪徳寺」東京都世田谷区豪徳寺2-24-7
「AMAZING COFFEE TOKYO GOTOKUJI」東京都世田谷区豪徳寺1-23-14メゾン園田
森仲ジョウ
出演 森仲ジョウ(モデル、俳優) モデル、俳優。大阪府出身。特技は野球・ヌンチャク・殺陣。
TOKYO Another Collection2022グランプリ受賞。G-SHOCK時計.ギャツビーをはじめモデル活動実績多数。「やっと気付いた愛のかたち(千葉テレビ)」「THE突破ファイル」「さんま御殿」「めぐる未来」「'Number_i'MV」など映像活動実績も多数。Instagramフォロワー数1万人。
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栗本奈央子
執筆者 (ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。