下北沢サブカルの街で江戸と現在が交差する散歩

和さんぽ
和さんぽとは 和装で各地をお散歩する企画です。各地の名所、名跡、スポット、食事処などご紹介します。

日本の旅侍×「和と人の交流ちとせ」の企画「和さんぽ」。今回は「和と人の交流ちとせ」の3人と下北沢を和さんぽで楽しんできました。メンバーは鏑木さん&島田さん&森仲さんの和さんぽお馴染みトリオです。

サブカルの街・下北沢とは

東京都世田谷区の北東部に位置する「下北沢」は、厳密には地名ではなく、小田急小田原線と京王井の頭線の「下北沢駅」周辺エリアを指します。地名としては世田谷区の北沢地域で、武蔵野台地の北側にあり、沢がたくさんあったから「北沢」と呼ばれるようになりました。渋谷や新宿まで10分圏内と交通の便もよく、商業地域として栄えています。

下北沢で有名なのが「古着」に「音楽」「演劇」といったサブカルチャー。古着屋さんは約200店舗あると言われており、日本屈指の古着の聖地として国内外から人気です。もともと下北沢は第二次世界大戦後に立った闇市から始まり、やがて商業地として発展。1990年代のブームなどで古着の街として知られるようになりました。

また、前後する形でミュージシャンや役者たちが下北沢で活動するようになり、小劇場やライブハウスが乱立。今も下北沢は「音楽の街」「演劇の街」であり続けています。

再開発が進む下北沢

下北沢の和さんぽの出発点はやっぱり下北沢駅。2019年から下北沢では駅や周辺地域の再開発事業が進んでおり、駅もリニューアルされました。昔よりも綺麗になったことに驚きつつ、歩き始める一行。昔ながらの風情が残り、古着屋の看板が目立つメインストリートの下北沢南口商店街の坂を下ってすすむと徐々に落ち着いた雰囲気になっていきます。

徳川家ゆかりの古刹・森巖寺

駅から散歩すること約10分、たどりついたのが徳川家ゆかりの浄土宗の古刹・森巖寺。正式には「八幡山浄光院森巖寺」で、徳川家康の次男・結城秀康の位牌所として、慶長13年(1608年)に建立されました。領国の越前(現福井県)で病のため死期を悟った秀康は、一乗院住職の万世和尚に自分の死後江戸に寺を建て、位牌所にするよう要望。高齢だった万世和尚は弟子の清譽存廓上人に遺命を託し、この場所に森巖寺が建てられました。

ご本尊は阿弥陀如来で、本堂に脇侍の観音菩薩、勢至菩薩とともに「弥陀三尊」として祀られています。秀康の位牌は三尊の元にある厨子に安置されています。

徳川家ゆかりのお寺のため、建物には三つ葉葵の紋が見られるのが特徴。昭和の初めまでは松平家の子孫が年に一回お寺を訪れており、寺側は葵の紋の入った漆塗りの漆器でおもてなしをしたのだとか。

また、江戸時代森巖寺は針や灸の寺として有名で、入り口には「粟嶋の灸」の看板が掲げられています。なぜ針灸?と思われがちですが、これは寺に祀られている「淡島様」が由来です。

淡島様は諸説ありますが少彦名命だとされており、主に婦人病や安産祈願など女性にご利益のある守り神として信仰されています。総本社は和歌山県和歌山市加太の淡嶋神社です。

初代の住職・清譽存廓上人は紀州(和歌山県)出身。持病の腰痛に悩んでいたところ、淡島様が夢枕に立ち、鍼灸の秘伝をさずけてくれました。上人は早速自分で施術をしてみたところ、腰痛が嘘のように全快!このため淡嶋神社に願い出て淡島様を勧請し、淡島堂を建てました。その後、森巖寺は施灸スポットとして有名になり、針供養も行われるようになりました。現在も針塚があり、12月8日には針供養がおこなわれています。

このほか、不動明王と閻魔大王を祀る「不動堂・閻魔堂」や開山当時からある樹齢400年以上の大イチョウの木なども見どころです。

戦国時代から続く北澤八幡神社

森巖寺の少し散歩すると、世田谷城主だった吉良頼康が城の鬼門の守護として勧請した北澤八幡神社です。その歴史は森巖寺よりも古く、文明年間(1469年〜1484年)の創建と伝わっています。

吉良氏は北沢や馬引沢をはじめ「沢」のつく7つの地域を治めており、それぞれに八幡様を祀っていました。このため「世田谷 七沢 八八幡」と呼ばれていましたが、そのなかでも北澤八幡神社は「七澤八社唯一 正八幡宮」として篤く崇敬されていました。

主祭神は応神天皇、比売神、神功皇后、仁徳天皇。他にも境内社として、産土社、弁天社、各種稲荷社などが祀られています。ちなみに産土社のお社は江戸時代に建てられた旧本殿。現在の本殿は昭和53年(1978年)に建てられました。

また、境内には明治26年(1893年)建造・平成16年(2004年)改築の神楽殿があり、鎌倉にある鶴岡八幡宮の神楽殿を模したのだか。9月の「北沢八幡宮祭礼」の際には華やかな巫女舞や神楽、雅楽などが披露されます。北沢八幡宮祭礼は下北沢地区最大のお祭りで、「北澤八幡の秋祭り」として世田谷八景にも選ばれています。

マラサダ専門店「THE MALASADA TOKYO 下北沢店」

神社仏閣を巡った後は甘いもので一休み。というわけでお散歩隊一行は下北沢南口商店街に戻り、「THE MALASADA TOKYO 下北沢店」を訪れました。こちらはハワイアンスイーツとして知られる「マラサダ」の専門店。スタイリッシュな外観が印象的なお店です。

マラサダはもとはポルトガル発祥の揚げドーナツで、粉砂糖やシナモンなどをまぶして食べます。通常は穴なし、具なしが一般的ですが、最近では具入りもあります。

今回は定番のプレーンやシナモンに、数量限定で販売しているオールドファッションのチョコとストロベリーなどをチョイス。ふわふわのマラサダ、食べ応えのあるチョコに甘酸っぱいストロベリーを楽しみました。

ミカン下北、下北線路街…新スポットをチラ見

続いての散歩は下北沢駅に戻り、2022年にオープンした京王井の頭線の高架下にある商業施設「ミカン下北」をちらっとのぞき見。レストランにカフェ、シェアラウンジにコワークスペースがそろった複合施設は新しい下北沢の象徴的スポットのひとつで、見ているだけでワクワクしてきます。

続いて向かったのが、小田急線の線路跡地に2020年にオープンした「下北線路街」。小田急小田原線の東北沢駅~世田谷代田駅間が地下化したことで空いた全長1.7kmの線路跡地を再開発したスポットで、商店街、複合施設に都市型ホテル、保育園とさまざまな施設が並びます。

その下北線路街に2019年にオープンしたのが「下北線路街 空き地」。イベントやPOP UPキッチンをオープンできるエリアで、キッチンカーなどもあり、イベント時は多くの人でにぎわいます。

「下北線路街 空き地」ではずらっと並ぶキッチンカーグルメを楽しむ一行。「ハーディングズ カリビアン キッチントラック」ではジャマイカ餃子にペッパーシュリンプ、ジャークチキンといったカリビアン料理を美味しくいただきました。このほか「うどん似和基」をはじめとしたさまざまなキッチンカーが定期的に出展しているので、キッチンカーでさっと食事をしたいときにはおすすめですよ。

【今回の散歩コース】
下北沢駅→森巖寺→北澤八幡神社→THE MALASADA TOKYO 下北沢店→ミカン下北→下北線路街・下北線路街空き地
【今回訪れたスポット】
「森巖寺」東京都世田谷区代沢3-27-1
「北澤八幡神社」東京都世田谷区代沢3-25-3
「THE MALASADA TOKYO 下北沢店」東京都世田谷区代沢5-36-17
「ミカン下北」東京都世田谷区北沢2-11-15
「下北線路街・下北線路街空き地」東京都世田谷区北沢2-33-12付近 下北沢交番の隣
島田勇矢
出演 島田勇矢(俳優、殺陣) 俳優、殺陣。大阪府出身。特技は殺陣。剣道2段・弓道2段。
「アバランチ(フジテレビ)」「真犯人フラグ(日本テレビ)」「警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜(テレビ東京)」など映像出点多数。舞台「生贄姫-黄泉比良坂 -(Samurai Sword Performance Team)」をはじめ舞台出演も多数。
森仲ジョウ
出演 森仲ジョウ(モデル、俳優) モデル、俳優。大阪府出身。特技は野球・ヌンチャク・殺陣。
TOKYO Another Collection2022グランプリ受賞。G-SHOCK時計.ギャツビーをはじめモデル活動実績多数。「やっと気付いた愛のかたち(千葉テレビ)」「THE突破ファイル」「さんま御殿」「めぐる未来」「'Number_i'MV」など映像活動実績も多数。Instagramフォロワー数1万人。
鏑木志織
出演 鏑木志織(剣舞・創作舞踊・殺陣) NPO法人「和と人の交流ちとせ」代表理事。特技は剣舞・創作舞踊・殺陣。ミス江戸NADESHIKO2019準グランプリ受賞。JAPAN EXPO in Paris演舞ほか、JAPANIMANGA Night 2018(スイス)、KANAGAWA Festival in Hanoii 2019(ベトナム)等海外公演の実績あり。映画キングダム2にも関わる。Instagramフォロワー数1.8万人。
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栗本奈央子
執筆者 (ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。
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