尾山台閑静な住宅街が広がる尾山台で歴史ある古刹を散歩
- 和さんぽとは 和装で各地をお散歩する企画です。各地の名所、名跡、スポット、食事処などご紹介します。
日本の旅侍×「和と人の交流ちとせ」の企画「和さんぽ」。今回はモデルや役者として活躍中の森仲ジョウさんと一緒に、東京都世田谷区の尾山台をお散歩しました。
尾山台とは
東京都世田谷区の南部にある尾山台は、等々力とともに高級住宅街として知られる地域です。住環境を保護するために「第一種低層住宅専用地域」となっているエリアが多く、高い建物が少ないのが特徴。さらに自然景観を維持するための風致地区に指定されていることもあり、豊かな自然が残されています。
尾山台の南部には丸子川(旧六郷用水)が流れ、多摩川が武蔵野台地を数十万年以上かけて削って作られた国分寺崖線が続きます。国分寺崖線付近は坂が続く自然が豊かな場所で、傳乗寺や宇佐神社といった古刹があるほか、古墳が残る地域としても知られています。
ちなみに尾山台は江戸時代は「荏原郡小山村」でしたが、明治時代中期に同じ荏原郡内にある「小山村」(現品川区小山)と区別をつけるために「尾山」になったそうです。
ターミナル駅は東急大井町線の尾山台駅。自由が丘駅と二子玉川駅までそれぞれ2駅で移動できます。駅前には4つの商店街があり、買い物には困りません。落ち着いた雰囲気の街は住みやすいと人気です。
南口に広がるおしゃれな「ハッピーロード尾山台」
お散歩の開始は、尾山台駅の南口から環八通りまで続く「ハッピーロード尾山台」から。街路樹に囲まれた石畳とおしゃれな商店街で、緩やかな上り坂沿いにさまざまな店が並んでいます。ハッピーロード尾山台は愛称で、正式には尾山台商栄会商店街。1989年の商店街道路改造工事の完成を機に名付けられました。
商店街には飲食店やコンビニをはじめとしたチェーン店に加え、理容店に米屋、果物屋精肉店など昔ながらのお店もちらほら。年間を通して数多くのイベントが開催されており、地元の人々から愛されています。10月の尾山台フェスティバルは世田谷区民から絶大な人気を誇っています。
ネイルサロン併設!仲良し姉妹が運営する「HANAKADO」
そんなハッピーロード尾山台沿いにある「HANAKADO」はカフェ&バーにネイルサロンが併設されたお店。カフェ経験のある姉とネイリストの妹の姉妹で運営されており、和モダンの雰囲気漂うおしゃれな内装が特徴です。ワンちゃんも一緒に入れるカフェで、ワンちゃん専用メニューも用意されています。
カフェのメニューはコーヒーや紅茶に加え、アルコールを提供。「おうちで食べられそうで食べられない、心が和む味」をコンセプトにしたという、自家製柔らか鶏丼や味噌バターチキンカレーといった食事も楽しめます。7月からは無農薬サラダにたまごサラダ、パンとドリンクがついたモーニングも始められています。
今回はゆずソーダをチョイス。柑橘系のさっぱりした味わいを楽しみました。
世田谷区の古刹・傳乗寺
HANAKODOから約12分、ハッピーロード尾山台を通り抜け、閑静な住宅地を南に散歩していくと国分寺崖線が近づいてきます。坂を下るうちに遠くに五重塔を発見!導かれるように立ち寄ったのが「傳乗寺」です。
正式には松高山法生院傳乗寺で、創建は不明。江戸時代初期に住誉良公和尚によって、多摩川対岸にある神奈川県川崎市中原区の「泉澤寺」の末寺として建立されたようです。
本尊は阿弥陀如来。本堂には平安時代に作られた頭部をもつ地蔵菩薩立像が収められています。伽藍は享和2年(1802年)の火事で焼失し、その後再建されたものです。境内で一躍目を引く五重塔は2005年に建てられました。
境内はコンパクトですがきちんと手入れされており、美しい庭園のような雰囲気はお散歩にぴったりです。四季折々の花々が楽しめる隠れた名所でもあり、春にはシャクナゲをはじめとした赤い花が見ごろを迎えます。秋のイチョウも見事ですよ。
源頼義ゆかりの宇佐神社
続いて隣にある「宇佐神社」を訪れました。世田谷区で一番南にあるという神社で、祭神は誉田別命(応神天皇)。社殿によれば、その起こりは平安時代後期までさかのぼります。
永承6年(1052年)、奥州に安部氏平定に向かう源頼義がこの地に陣を置いた際、白雲が8つに分かれて棚引くのを見て喜び、神に勝利を誓いました。そして奥州を平定したのち(前九年の役)、康平5年(1063年)に八幡社を建てて神に勝利を報告したのが起源なのだそうです。創建は康平5年(1063年)で、元禄12年(1699年)に社殿が再建されています。現在の社殿は大正7年(1918年)の造営です。
境内は緑に囲まれた落ち着いた雰囲気。神社の拝殿の奥には5世紀から6世紀に作られたと考えられる八幡塚古墳があります。これは国分寺崖線沿いに残る野毛古墳群のひとつで、首長クラスの人物の墓だと考えられており、調査からは銅鏡や鉄刀に槍、鉄鏃とガラスの小玉が出土しています。
寮の坂で歴史に思いをはせる
傳乗寺と宇佐神社の目の前にある、S地カーブを描く坂が「寮の坂」。名前の由来は、傳乗寺の僧侶が住んだ学寮から。実は傳乗寺はかつては坂の東側の台地にあり、そこに本堂と学寮が並んでいたのです。
歴史ある坂は、近くにある籠谷戸と呼ばれていた多摩川の入江(現田園調布雙葉学園付近)から、現在の九品仏・浄真寺にあった「奥沢城」まで、武器や兵糧などの荷を運ぶ際の通り道としても利用されていました。江戸時代になると、泉澤寺と浄真寺の中間軍事拠点として傳乗寺は位置づけられており、寮の坂は軍用道路として活用されていたようです。
狐塚古墳緑地から富士山を望む
坂を上がってから西にお散歩すること約5分、今回のお散歩の最後の目的地・狐塚古墳緑地が見えてきました。こちらは古墳を保全するために整備した緑地で、現在は公園になっています。
名前の由来は以前この場所に稲荷神社があったからだとか。ちなみに、尾山台のキャラクター「尾山オッポン」の狐のしっぽは狐塚古墳が由来です。古墳は5世紀から6世紀前半に作られた円墳(※諸説あり)で、発掘調査では埴輪の破片や土器などが出土しています。
アカマツをはじめとした豊かな自然が残る場所は、階段を上って高台の墳丘の上から眺める景色が最高!晴れた日にはなんと富士山を拝めることも。秋はどんぐり拾いも楽しめますよ。
- 【今回の散歩コース】
- 尾山台駅→ハッピーロード尾山台→HANAKADO→傳乗寺→宇佐神社→寮の坂→狐塚古墳緑地
- 【今回訪れたスポット】
- 「HANAKADO」東京都世田谷区尾山台3-10-8
「傳乗寺」東京都世田谷区尾山台2-10-3
「宇佐神社」東京都世田谷区尾山台2-11-3
「寮の坂」東京都世田谷区尾山台
「狐塚古墳緑地」東京都世田谷区尾山台2-17-10
- 出演
森仲ジョウ(モデル、俳優)
モデル、俳優。大阪府出身。特技は野球・ヌンチャク・殺陣。
TOKYO Another Collection2022グランプリ受賞。G-SHOCK時計.ギャツビーをはじめモデル活動実績多数。「やっと気付いた愛のかたち(千葉テレビ)」「THE突破ファイル」「さんま御殿」「めぐる未来」「'Number_i'MV」など映像活動実績も多数。Instagramフォロワー数1万人。
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- 執筆者 栗本奈央子(ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。