木更津神話の物語が残るおしゃれな港町を散歩
- 和さんぽとは 和装で各地をお散歩する企画です。各地の名所、名跡、スポット、食事処などご紹介します。
日本の旅侍が提供する「和さんぽ」。今回は役者で殺陣の講師も務める島田勇矢さんと、千葉県木更津市を散歩しました。
木更津市とは
房総半島の入り口にある千葉県木更津市。東京湾岸に位置する港町で、温暖な気候が特徴です。東京湾では海産物、内陸部に広がる上総丘陵では米やレタス、梨などの農作物が有名です。圏央道に東京湾アクアライン、館山自動車道と直結していることからアクセスも便利で、リゾート地としても知られています。
木更津の歴史は古く、『古事記』でおなじみの日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の伝説からその名がついたという説があります。日本武尊は日本各地を平定していったとされる人物ですが、東京湾を渡る際に海が荒れてしまいます。その時、妻の弟橘媛(オトタチバナヒメ)が海神の怒りを鎮めるために海に飛び込み人柱となったおかげで、日本武尊は無事に海を渡り上総に上陸できました。妻の死を悲しんだ日本武尊はしばらくこの地を去らず、「君不去(きみさらず)」からきさらづ、になったというものです。
木更津は古代から豪族たちが住んだ歴史ある地域で、『万葉集』には「馬来田」や「望陀」といった地名が登場しています。江戸時代には上総と江戸を結ぶ海上輸送の流通拠点として栄え、港や川を海川両用の五大力船、通称「木更津船」が行き交いました。現在も木更津にはさまざまな歴史的スポットが残されています。
そんな木更津市の中心市街地のどまんなかにあるのが、今回の和さんぽのスタート地点・木更津駅です。JR内房線と久留里線が乗り入れており、東京駅からは京葉線・内房線経由の特急「さざなみ」で約1時間。昭和の風景が残る街並みはどこかなつかしく、温かみを感じさせます。
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気軽に貸切OK♪カフェ&バル「ハコ+」
木更津駅西口から港に向かって富士見通りをのんびり散歩すること徒歩約2分、日蓮宗吉祥山光明寺が見えてきます。建武2年(1335年)に日輪上人が開いたお寺で、樹齢400年超の大きな黒松が特徴。さらに、江戸時代に木更津を有名にした歌舞伎『与話情浮名横櫛』に出てくる主人公の若旦那、「切られ与三郎」こと与三郎のお墓があることでも知られています。
そんな光明寺を通り過ぎたところにあるのが、2023年1月にオープンした隠れ家カフェ&バル「ハコ+」です。少人数の貸切「歓迎」で、カフェタイムのお昼は11時半から14時まで。子連れに嬉しいキッズメニューがあり、お昼はママ友会などにも利用される、お散歩で立ち寄りたい地域密着型のお店です。
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ランチはスープにドリンク付き。この日はカルボナーラならぬカルボチキンをいただきましたが、スモークチキンとカルボソースの相性がぴったり。島田さんも「めちゃくちゃうまい!」と大絶賛でした。おいしいご飯を食べた後にはお礼の剣舞を披露。オーナーと盛り上がる島田さんはとてもいい笑顔でした。
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日本武尊の伝説が残る 八剱八幡神社
ハコ+の向かい側に鎮座するのが、八幡様の相性で親しまれている「八剱八幡神社」。主祭神は誉田別命(應神天皇)に息長足姫命(神功皇后)、足仲彦命(仲哀天皇)、素盞嗚命(須佐之男命)といった『古事記』や『日本書紀』でおなじみの神々に加え、日本武尊が祀られています。ちなみに日本武尊の息子が仲哀天皇で、仲哀天皇と神功皇后の息子が應神天皇です。
社殿によれば昔このあたりの土地は「八剱の里」と呼ばれていたそうで、里の神を「八剱の神」として祀ったのが始まりなのだとか。これが素盞嗚命だったと考えられています。その後、妻の死を悲しんだ日本武尊がしばらく滞在したことなどから他の神々が祀られることになりました。厄除・交通安全・商売繁盛・合格祈願・学業成就等さまざまなご利益があるそうです。
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平安時代末期には源頼朝が戦勝祈願に訪れており、鎌倉時代初期に神領を奉納、その際に社殿が造営されたようです。江戸時代には徳川家康から社領を寄進されており、慶長19年(1614年)の大坂冬の陣の際は木更津の船頭が神社の加護のもと活躍したことから、家康から感謝の品が寄進されています。
広々とした神社内にある社殿は安永2年(1773年)に再建されたもの。その後数度にわたって改修工事が進められ、狩野派の絵師の手による格天井装飾が復元されました。花鳥風月が162枚の絵がずらっと並んだ天井は見ごたえがありますよ。
神社にお散歩した際にはぜひ見ていただきたいのが、神職さんが手作りしているという「水引飾り」と呼ばれる紐飾りです。ご祝儀袋等でよく見る水引は、清々しく水で祓い清める意味があるとのこと。色とりどりの水引飾りはとても可愛らしいですね。
このほか、毎年7月の例大祭で登場する御神輿は「関東一の大神輿」と呼ばれるもの。嘉永3年(1850年)に作られた巨大な御神輿はなんと約1.5トンの重さを誇ります。お祭りの際はなんとGPSで大神輿の位置が分かります!
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天気のよい日には「FUJIMI CORNER」で一休み
続いてのお散歩スポットは八剱八幡神社の横にあるカフェ「cafe Fujimi corner」で一休み。こちらはコンテナトレーラーを利用しつつ、コンテナに設置した太陽光パネルの電力だけで運営しているエシカルなカフェです。…つまり、雨の日はお休みなんです。
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月・木〜日が営業日ですが、不定休なのでオープンしていたらラッキーかも。空いているかどうかはインスタグラムをチェックしましょう。たまにクロワッサンなどを楽しめる朝市や、ビールやワインとつまみを楽しむ夜カフェを開催しています。
アート&エシカルがテーマのカフェはとってもおしゃれ。さまざまなカップにドライフラワーがおしゃれに飾られています。コンテナの目の前は芝生になっており、犬も同伴OK。
メニューはオーナーさんの仕入れ次第で変わるそうで、今回は水出しアイスコーヒーと黒糖プリンをいただきました。剣舞で疲れた体にしみわたります…。
オーナーは実は木更津市の「オーガニックなまちづくり」にもかかわる有名な方なのですが、とっても気さく!島田さんと大盛り上がりしていました。
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MIFUNEYAMA COFFEE 木更津東口駅前店
最後に散歩で訪れたのが、駅前の「MIFUNEYAMA COFFEE 木更津東口駅前店」。8月4日にオープンしたばかりということで立ち寄ってみました。
MIFUNEYAMA COFFEEは木更津市内にある、世界中から選りすぐった珈琲豆を自家焙煎して提供する珈琲専門店(+カフェ)。千葉県で4店舗を展開しており、木更津東口駅前店は5店舗目で、木更津市内の泊まれる農園「KURKKU FIELDS」とのコラボ店舗です。このためクルックフィールズの野菜をはじめとした商品も購入できます。クルックフィールズで取れた牛乳を使ったソフトもありますよ。
また、木更津市内のドーナッツ店「HAVE A DONUT!」のドーナツも販売中。今回はドリップコーヒーとオールドファッションドーナツのプレーンをいただきました。
店内は明るい雰囲気で、大きな窓が特徴。カウンター席からは高速バスのりばが一望できるので、カフェでのんびりバスを待つのがおすすめです。品川駅や横浜駅、川崎駅などへのバスがありますよ。
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- 【今回の散歩コース】
- 木更津駅→ハコ+→八剱八幡神社→FUJIMI CORNER→MIFUNEYAMA COFFEE 木更津東口駅前店
- 【今回訪れたスポット】
- 「ハコ+」千葉県木更津市中央1-4-2
「八剱八幡神社」千葉県木更津市富士見1-6-15
「FUJIMI CORNER」千葉県木更津市富士見1-6-18
「MIFUNEYAMA COFFEE 木更津東口駅前店」千葉県木更津市富士見1-1-1
- 出演
島田勇矢(俳優、殺陣)
俳優、殺陣。大阪府出身。特技は殺陣。剣道2段・弓道2段。
「アバランチ(フジテレビ)」「真犯人フラグ(日本テレビ)」「警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜(テレビ東京)」など映像出点多数。舞台「生贄姫-黄泉比良坂 -(Samurai Sword Performance Team)」をはじめ舞台出演も多数。
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- 執筆者 栗本奈央子(ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。