宮の坂招き猫発祥の豪徳寺と世田谷八幡宮を散歩

和さんぽ
和さんぽとは 和装で各地をお散歩する企画です。各地の名所、名跡、スポット、食事処などご紹介します。

日本の旅侍×「和と人の交流ちとせ」の企画「和さんぽ」。第五回はモデルや役者として幅広く活躍している森仲ジョウさんと、東急世田谷線の宮の坂駅周辺をめぐりました。

歴史ある宮の坂駅周辺エリア

東急世田谷線「宮の坂駅」のある宮坂エリアは世田谷八幡宮や豪徳寺といった有名な寺社に囲まれた歴史的な地区として知られています。宮の坂の名前は、世田谷八幡宮の東側にある「宮ノ坂」と呼ばれる坂道から。また、宮坂は高級住宅街としても知られています。

鎮守の神様・世田谷八幡宮

宮の坂駅の西側にあるのが、世田谷の鎮守の神様「世田谷八幡宮」です。平安時代の寛治五年(1091年)、陸奥守・源義家が勧請したとされています。源義家といえば、奥州を支配していた清原氏の内紛をきっかけにした後三年の役(1087年〜1094年)で活躍した武将で、源頼朝の祖先。「八幡太郎義家」として数々の勇猛な伝説を残しています。

奥州から帰る際に世田谷で豪雨で足止めされた義家が、「戦の勝利は守り神である八幡大神の御加護のおかげ」と感謝し、豊前国(現在の大分県)の宇佐八幡宮の御分霊を世田谷に招いて祭りを執り行い、地元の人々に鎮守の神として信仰するよう諭したのが世田谷八幡宮の始まりです。ご祭神は「應神天皇」「仲哀天皇」「神功皇后」の3柱。室町時代には世田谷城主の吉良頼康が社殿を修築・造営しており、吉良氏から信仰されていたことがわかります。

境内は緑豊かな落ち着いた雰囲気。手水には季節の花々が飾られており、美しい「花手水」としてSNSで話題になっています。世田谷区宮坂にある「鈴木花店」の奉納で、フラワーロス対策として始まったのだとか。本殿に進むと聞こえてくる涼しげな音。実は世田谷八幡宮では夏に本殿近くに風鈴を飾っているんです。夏の音を楽しみながら本殿に進んでお参りしましょう。本殿前の親子の狛犬も見どころの一つです。

このほか、境内の弁天池には厳島神社が祀られており、悠々と泳ぐ池の鯉たちや鴨をのんびり眺めるのもおすすめです。

江戸三相撲の名所

源義家は勧請の際、部下たちに奉祝相撲を取らせました。このため世田谷八幡宮は相撲の神社としても知られており、境内には土俵があります。江戸時代には「江戸三相撲」として多くの人々に愛されました。今でも神事として、9月の例大祭の際に迫力満点の学生奉納相撲が行われています。

また、境内には江戸から昭和初期にかけて、人々が鍛錬や力比べなどで持ち上げていた「力石」が並んでいます。重さは48貫(約180kg)で、奉納された日付や名前などが石に刻まれています。

くしねこ

世田谷八幡宮から豪徳寺に向かって歩く途中にあるのが「くしねこ」。豪徳寺産のハムやソーセージを取り扱う飲食店で、招き猫で知られる豪徳寺にちなみ、招き猫の焼き印が特徴の「くしねこビアソーセージ」や、ソーセージをぐるぐる巻きにした「くしねこフランク」といったインスタ映えするメニューを用意しています。店内飲食も可能ですよ。

森仲さんは「くしねこビアソーセージ」をチョイス。目の前で招き猫の焼き印を押してくれる逸品は、ビールによく合うしっかりとした味が特徴です。森仲さんも「しっかりとした味で、昼からお酒が飲みたくなりますね」といいつつパクパク食べていました。

くしねこではビールやレモンサワー等のアルコール類も販売中。クランベリーソーダにかき氷と、暑い夏にはぴったりのドリンクや氷菓も提供しています。

井伊家の菩提寺・豪徳寺

宮の坂駅付近の人気観光スポットといえば、招き猫で有名な「豪徳寺」!戦国時代は吉良氏の居城・世田谷城の本丸がありましたが、天正18年(1590年)、豊臣秀吉による小田原征伐の際、北条方についていた吉良氏は敗走し、城は豊臣方に接収されたのち廃城となりました。

豪徳寺の前身となったのは、文明12年(1480年)、当時の世田谷城主・吉良政忠により城内に建立された「弘徳院」。寛永10年(1633年)に世田谷の地が彦根藩・井伊家の所領地になると、井伊家の江戸菩提寺に定められました。寺は大坂の陣で大活躍した第2代藩主・井伊直孝の時代に整備されており、万治2年(1659年)に直孝が没すると、寺の名称は直孝の法号である「久昌院殿豪徳天英大居士」に因んで豪徳寺に改称されました。

境内には彦根藩主井伊家墓所があり、広々とした敷地内に直孝や桜田門外の変で暗殺された第13代藩主・井伊直弼など6人の藩主や正室などの墓が並びます。墓所は都内屈指の大名墓として、2008年に国史跡に指定されています。一般公開されており、入り口横に掲示されている地図を頼りにお参りするのがおすすめです。

また、境内にある真っ赤な「赤門」は、井伊家の上屋敷にあった長屋門を移築したもの。このほか旧佐倉藩堀田家の江戸屋敷内の建物を譲り受けて作られた書院、延宝5年(1677年)建立の仏殿など、江戸時代を偲ばせる建物が残ります。

豪徳寺の招き猫伝説

豪徳寺といえば招き猫のイメージが強いですが、この招き猫伝説も井伊家に関するものです。井伊直孝が鷹狩りの帰りに世田谷を通りがかった際、弘徳院(豪徳寺)の前で一匹の白い猫が手招きしていました。猫に導かれて寺に入ったところ、突然雷が鳴り響き雨が降り始めます。直孝は猫のお陰で雷雨を避けることができ、さらに寺の和尚との話も楽しむことができました。こうした幸運に感謝した直孝は弘徳院を支援し、菩提寺とした、と伝わっています。

その後、豪徳寺は福を招いた猫を「招福猫児(まねきねこ)」と呼んで大切にすることに。猫を祀るための「招福殿」も建てられました。ちなみに招福猫児は小判を持たず、右手をあげて人を招いていますが、これは人を招いて「縁」をもたらすという意味から。縁を生かして福を招けるかはその人次第であり、報恩感謝の気持ちがあれば自然と福が訪れる、という教えに基づいているそうです。とっても深いですね。

豪徳寺の境内にはさまざまな場所に招福猫児の姿が見られます。招福殿の奉納所には参拝者が奉納した猫がずらりと並んでおり、森仲さんも余りの迫力にちょっとびっくり。三重塔には十二支が飾られており、そのなかにも猫が飾られています。いろいろなところに猫がいるので、探しながら散策してみましょう。

また、社務所では招福猫児が購入でき、持ち帰ることができます。絵馬やお守りにも猫の姿があり、猫好きにはたまらないスポットです。

くつろげる古民家カフェ「cafe amane」

豪徳寺にお参りした後は、宮の坂駅近くの古民家カフェ「cafe amane」へ。まるで自宅や祖父母の家にいるかのようにくつろげるカフェは、一休みにぴったりです。おすすめは10時間じっくり煮込んだというポークカレー。オリジナルブレンドのスパイスが利いており絶品です。チキンカレーやグラタンもおすすめですよ。

今回は一休みということで甘味をチョイス。シュワシュワのサイダーにクリームぜんざいで夏を感じながらくつろがせていただきました。椅子の席から座敷までさまざまな種類の席があり、ふらっと一人で入ってものんびりできるカフェなので、気軽に訪れましょう!

【今回の散歩コース】
宮の坂駅→世田谷八幡宮→くしねこ→豪徳寺→cafe amane
【今回訪れたスポット】
「世田谷八幡宮」東京都世田谷区宮坂1-26-2
「くしねこ」東京都世田谷区宮坂1-25-2
「豪徳寺」東京都世田谷区豪徳寺2-24-7
「cafe amane」東京都世田谷区豪徳寺2-18-6
森仲ジョウ
出演 森仲ジョウ(モデル、俳優) モデル、俳優。大阪府出身。特技は野球・ヌンチャク・殺陣。
TOKYO Another Collection2022グランプリ受賞。G-SHOCK時計.ギャツビーをはじめモデル活動実績多数。「やっと気付いた愛のかたち(千葉テレビ)」「THE突破ファイル」「さんま御殿」「めぐる未来」「'Number_i'MV」など映像活動実績も多数。Instagramフォロワー数1万人。
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栗本奈央子
執筆者 (ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。
日本の城フォトコンテスト.03