等々力気軽に散歩できる都内の癒しスポット、等々力不動尊&等々力渓谷へ

和さんぽ
和さんぽとは 「和と人の交流ちとせ」の剣士が各地をお散歩する企画です。各地の名所、名跡、スポット、食事処などご紹介します。

日本の旅侍と「和と人の交流ちとせ」の新企画「和さんぽ」がいよいよ始動しました。「和と人の交流ちとせ」は東京都世田谷区で「地域交流×和の文化」をテーマに、大人から子どもまで楽しめる日本文化の体験を通じて地域のコミュニティづくりや地域振興に取り組んでいる団体です。今回は日本の旅侍と和服で地域をめぐる「和さんぽ」を実施。第一回は役者で殺陣の講師も務める島田勇矢さんと、東京都世田谷区の等々力地区を散歩しました。

世田谷区等々力地区とは?

今回の和さんぽの舞台・東京都世田谷区等々力地区は、世田谷区の南部にある閑静な住宅街が広がる地域です。拠点となる東急大井町線の「等々力駅」付近には商店街が広がり、路地裏にはこじゃれたお店もちらほら。東京23区で唯一の渓谷「等々力渓谷」をはじめ、緑豊かな地域としても知られています。

まずは東急大井町線「等々力駅」からスタート

和さんぽのスタートは東急大井町線の「等々力駅」から。東急東横線・東急大井町線の乗換駅である「自由が丘駅」から電車で約4分です。なお、等々力駅は各駅停車しか停車しないので注意しましょう。

駅の南口から新緑の美しい景色を楽しみながらのんびり散歩すること約5分、最初のスポット・等々力不動尊に到着します。

地元から愛される等々力不動尊

等々力不動尊は平安時代、真言宗中興の祖である興教大師覚鑁上人が夢で、役行者が彫った不動明王からお告げを受けて開いた霊場です。言い伝えによれば、「武蔵国に結縁の地がある」と言う夢のお告げに従い、興教大師が役行者の不動明王を背負って等々力の地まで来たところ、夢と同じ渓谷を発見。興教大師が錫杖で岩をうがったところ、滝が流れ出しました。その滝の上に不動明王を設置したのが等々力不動尊の始まりです。

現在は真言宗智山派の満願寺の別院となっており、正式名称は「滝轟山明王院」。山門は昔の満願寺山門を移築しています。本尊は不動明王で、関東三十六不動霊場の第十七番札所、多摩川八十八ヶ所霊場の第三十三番札所になっています。地元の人からは「等々力のお不動様」として親しまれており、ふらっと訪れても受け入れてくれるような暖かみを感じる場所ですよ。

ご利益は厄除けから交通安全、縁結びまでさまざま。戦国時代には世田谷城主の蒔田(まいた)吉良氏が先勝祈願を祈ったことでも知られています。ちなみに蒔田吉良氏は世田谷から神奈川県横浜市南区の蒔田までを治めており、『忠臣蔵』でおなじみの三河吉良氏とは元は同じ一族です。

等々力不動尊は等々力渓谷の崖の上、つまり高台にあるため、境内にある「見晴らし台」からは美しい渓谷の景色を堪能できます。訪問したときは美しい新緑が楽しめましたが、春の桜、秋の紅葉の名所としても有名です。

散策に疲れたら、境内にある「四季の庭」というお休み処で一休み。コーヒーやソフトクリームなどが楽しめます。ソフトクリームには季節限定のフレーバーもありますよ。

等々力不動尊の境内の階段を降りると、覚鑁上人が穿ったという「不動の滝」があります。一説によれば不動の滝が轟く(とどろく)様子が「とどろき」という地名の由来になったのだとか。古くから修行の場として知られるパワースポットで、現在は崖に埋まった龍の口から細い滝が勢いよく流れ落ちています。滝の上には黒々とした不動明王があり、訪れた人々を静かに見守っています。

滝のそばには稲荷大明神と不動明王が祀られたお堂があるので、忘れずにお参りしましょう。

都内の「避暑地」等々力渓谷

等々力渓谷は武蔵野台地の南端にある、谷沢川の流れに沿って広がる約1kmの渓谷です。東京23区唯一の渓谷ですが、都内にいるとは思えないほど緑豊かな空間で、まるで避暑地のよう。木々に囲まれた渓谷は地上よりも気温が3度程度低いそうで、等々力不動尊から階段で下に降りると、すがすがしい空気を感じます。ひんやりと澄み切った、みずみずしい緑の空間を堪能しながらのんびり散策を楽しみましょう。

等々力渓谷内には30カ所以上の湧水があり、東京の名湧水57選にも選ばれています。湧水が豊かな植生を生み出しており、さまざまな植物と親しめます。冬の梅、春のたけのこ狩りに桜、新緑に秋の紅葉、どんぐり拾いと、四季折々の自然が楽しめるのも等々力渓谷の魅力です。

等々力渓谷には美しい竹林が広がっています。竹の葉のさやさやという涼しげな音を聞きながら散策をすると見えてくるのが日本庭園です。昭和の造園家・飯田十基によるもので、日本庭園は昭和48年(1973年)、書院は昭和36年(1961年)に作られました。石畳の階段をのんびり歩いて巡り、疲れたら書院で一休みしましょう。横には芝生広場があり、ピクニックの場所として地元の人々から親しまれています。

立入禁止区域があるので注意

2024年6月現在、等々力渓谷は等々力不動尊の付近を除いて半分以上の遊歩道が通行止め・立入禁止区域になっています。2023年7月に遊歩道にシラカシの木が倒れているのが発見されたことがきっかけで世田谷区が樹木調査をおこなった結果、園内に緊急伐採等が必要な「危険木」が52本発見されたためです。2025年度中には立入禁止が解除される予定です。

立ち入り禁止内には「ゴルフ橋」や環状八号線が通る「玉沢橋」、古墳時代末期から奈良時代にかけての横穴墓「3号横穴」などが含まれます。ゴルフ橋は昭和初期にこのあたりに約8ヘクタールに及ぶ巨大なゴルフ場があったことからその名がつけられました。赤い橋は等々力渓谷から見上げると、周りの緑とのコントラストが美しい写真が撮影できますよ。

3号横穴は奥行き13mの墓で、とっくりを半分に割ったような形をしています。3体の人骨に耳輪、土器などの副葬品が発見されており、等々力周辺を治めていた有力者の墓だと推定されているとのこと。

そのほかにも立入禁止区域にはさまざまな魅力的なスポットがあります。木々の伐採等の作業が終了次第、順次区画ごとにオープンしていくとのことですので、立入禁止の解除が待たれますね。

お休み処「雪月花」で瀧の音に耳を澄ます

等々力渓谷内にはのんびり一休みできるスポットがあります。それが不動の滝のすぐ横にあるお休み処「雪月花」です。雪月花ではお抹茶に落雁、おしるこやあんみつ、甘酒やラムネなどを楽しめます。土日祝日限定でくずもちもありますよ。夏にはかき氷やところてんも登場するそうです。

今回は冷たいお抹茶とあんみつをセレクト。昔ながらの和の甘味を滝の音や小川のせせらぎとともに楽しみました。都内とは思えないさわやかな空間を楽しみながらの一息はくせになりそうです。

【今回の散歩コース】
等々力駅→等々力不動尊→等々力渓谷→雪月花
等々力駅から徒歩5分、ふらっと立ち寄れる等々力不動尊と等々力渓谷はお散歩にぴったり。ぜひ気軽に訪れてみてくださいね。
【今回訪れたスポット】
「等々力不動尊」 〒158-0082 東京都世田谷区等々力1-22-47
「等々力渓谷」 〒158-0082 東京都世田谷区等々力1-22-26
「雪月花」 〒158-0082 東京都世田谷区等々力1-22-47
島田勇矢
出演 島田勇矢(役者、殺陣) 役者。大阪府出身。特技は殺陣。剣道2段・弓道2段。
「アバランチ(フジテレビ)」「真犯人フラグ(日本テレビ)」「警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜(テレビ東京)」など映像出点多数。舞台「生贄姫-黄泉比良坂 -(Samurai Sword Performance Team)」をはじめ舞台出演も多数。
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栗本奈央子
執筆者 (ライター) 元旅行業界誌の記者です。子供のころから日本史・世界史問わず歴史が大好き。普段から寺社仏閣、特に神社巡りを楽しんでおり、歴史上の人物をテーマにした「聖地巡礼」をよくしています。好きな武将は石田三成、好きなお城は熊本城、好きなお城跡は萩城。合戦城跡や城跡の石垣を見ると心がときめきます。
日本の城フォトコンテスト.03