【イベントレポート】「お城と剣舞」を開催しました
2024年8月4日、「日本の旅侍」と東京都杉並区の「BOOK CAFE+BAR COTO COTO」のコラボイベント「お城と剣舞」が開催されました!イベントの開催は「日本の旅侍」としては初めて。今回はそんなイベントをレポートします。
「お城と剣舞」
[日程]8月4日(日)
[第一部]講演会・剣舞 13:00~
[第二部]懇親会 15:00~
[講演]小和田泰経(日本城郭協会理事、静岡英和学院大学講師、早稲田大学エクステンションセンター講師)
[剣舞]鏑木志織(NPO法人「和と人の交流ちとせ」代表理事、パフォーマー)
BOOK CAFE+BAR「COTO COTO」でイベントスタート!
今回イベントをコラボ開催したのはJR・東京メトロ「荻窪駅」から徒歩約3分にある「BOOK CAFE+BAR COTO COTO」さん。こちらはフリーアナウンサーの橋谷能理子さんが大学の同級生とオープンしたビルの2階にある隠れ家のようなブックカフェです。
店内には約1,300冊の本がずらり。そんな本に囲まれたブックカフェで「お城と剣舞」のイベントを開催させていただきました。なんとありがたいことに満員御礼で、遠方の方も! 車椅子で駆けつけてくださった方もいらっしゃいました。
第一部は小和田泰経さんがお城の見どころを語りました
第一部では、日本城郭協会の理事で静岡英和学院大学講師、早稲田大学エクステンションセンター講師を務める小和田泰経さんがお城の見どころを講演してくださいました。
小和田さんのお父様は静岡大学名誉教授の小和田哲男さん。有名な歴史学者のお父様と子どものころからさまざまなお城を訪れているうちに、お城に関心を持つようになったそうです。沖縄旅行の際は観光というよりグスク(御城)巡りになった、と歴史学者の一家らしいエピソードもご披露いただきました。
小和田泰経さんは江戸時代の儒学者:荻生徂徠の『鈐録(けんろく)』を読み解き解説した『武士目線で語られる日本の城』も書かれていますが、今回のテーマはまさに「当時の武士の目線でいかにお城を楽しむか」。お城の種類や曲輪、堀、石垣、橋、天守や櫓などを細かく解説していただきました!
城づくりのコツ、守るための工夫とは
興味深かったのは「お城をどう作るか」といった根本的なお話。小和田さんによれば、城は「敵から守り抜くのが第一義であり、守っているほうが有利。3倍の兵力でないと城は落とせないのが常識」とのこと。館との違いは、館は曲輪が1つですが、城は複数の曲輪からなるという点。ただし、あまり曲輪が多すぎると守るための兵がたくさん必要になるので、大きい城は攻めにくい一方で守りにくいという欠点もあるのだとか。「適度なサイズ感が重要」とのことでした。
曲輪の形には連郭式(一列)、輪郭式(中心の本丸をぐるりと囲む)、梯郭式(階段状)、それらの組み合わせなどさまざまな形があり、図で分かりやすくご紹介いただきました。
さらに曲輪のポイントとしては「鉄壁の守りが理想ではない」とのこと。これは敵に落とされた際に取り返すことを想定しているから。また、がちがちに固めると籠城時に物資の運び入れができず、さらに最終局面で内部から脱出できなくなるため、曲輪には出入り口である「虎口(こぐち)」が設けられているのだとか。
とはいえ敵に攻められにくいのも重要ですから、戦国当初は門から城に直進できる「平虎口」だったところ、徐々に通路を湾曲させて曲がらないと中に入れない「喰違虎口」、さらに進化し、虎口に門を2つにして四角い空間(=枡形)を設ける「枡形虎口」が出現します。最初の門をくぐると四角い空間があり、そこに敵がたまるので攻撃するというわけで、「枡形が日本の城の完成形」(小和田さん)とのこと。
また、当サイトではおなじみの石垣や土塁の積み方についても紹介していただきました。小和田さんが「一番賢い」と評したのが、上と下が石垣、中央が土塁の「鉢巻腰巻石垣」。大砲がぶつかっても土塁が崩れず、上に石垣があるので土塁の耐久性が上がり建物が建てやすく、水堀に接しても石があるので土塁が流れない最強の存在!ただし石垣のような威圧感はないのが欠点です…ほぼ残っていませんが、近くでは江戸城の桜田堀のあたりで見られるそうですよ。
天守については「望楼型」「層塔型」に加え「独立式」「複合式」「連立式」等の種類を細かく解説。なお、天守は戦時は住めるものの普段人は住んでおらず、藩主などは参勤交代から帰ってきて1度登るレベルで、普段は倉庫扱いだったそうです。
このほか天守や櫓、「狭間」「石落とし」といった敵を攻撃する工夫についても解説いただき、筆者としても改めて城のすごさを思い知った次第です。
最後のQ&Aでは小和田さんが個人的に好きなお城を紹介。月山富田城(島根県安来市広瀬町富田)は「そこまで有名ではないけれど、尼子の本城。整備がしっかりされてて曲輪も残っている」とのことでした。ちなみに月山富田城は「山陰の麒麟児」こと山中幸盛(鹿介)ゆかりの城としても知られています。
また、「天空の城」として知られる竹田城(兵庫県朝来市和田山町竹田)もお好きなのだとか。ただし観光客が多すぎて自由に歩けなくなってきているそうで、「認知度が上がって多くの人に来てもらいたいけれど、オーバーツーリズム化、遺構の破壊にもなる。お城は3万から4万あると言われていますが、一つに集中せず分散して行ってもらいたい」とおっしゃっていました。
鏑木志織さんの美しく芯のある演武に魅了されました
小和田さんの講演のあとは鏑木志織さんによる剣舞と創作舞踊が披露されました。鏑木さんは剣舞や創作舞踊、殺陣のパフォーマーで、JAPANIMANGA Night 2018(スイス)、JAPAN EXPO Paris2019(フランス)をはじめとした海外公演も経験。モデルとしても活躍されており、第2回ミス江戸NADESHIKO 準グランプリも受賞しています。
当サイト「和さんぽ」でもおなじみ、世田谷区のNPO法人「和と人の交流ちとせ」の代表理事を務められています。殺陣をベースに日本文化の楽しみ方を地域の子どもたちに伝える活動をしています。
「凛とした美しさ」という言葉がぴったりの鏑木さんは、美しい剣舞や舞を披露してくれました。ブックカフェにふさわしく「竹取物語」や、新選組をテーマにした「誠」といったプログラムも用意。子どもたちの目の前で刀を振りつつ、子どもへの笑顔も忘れない鏑木さんに、観客一同釘付け!優雅な「竹取物語」にうっとりしつつ、「誠」の幕末の荒々しくも武士の矜持を思わせる迫力たっぷりの剣舞には思わず息をのみました。
コンパクトなカフェなので剣舞のスペースは狭かったのですが、ものともせず舞いきる鏑木さん。なんと畳一畳あれば大丈夫とのこと!終了後のインタビューでは、普段は体育館や公園で練習しているものの、部屋の1畳くらいの狭い空間を使いながらこっそり練習することもあった、という秘話が明かされ、観客一同驚いていました。
なお、「和と人の交流ちとせ」は11月4日、「和の祭典〜桜花〜」を玉川せせらぎホール(東京都世田谷区等々力)で開催する予定。大人から子どもまで楽しめるイベントで、こども殺陣クラブによるパフォーマンスも予定されています。親子で歴史に触れる素敵なチャンス、興味がある方はぜひ参加してみてくださいね。
(文・栗本奈央子)