世界遺産ライター・本田陽子、副編集長就任のご挨拶

このたび、「日本の旅侍」に副編集長として参画することになりました、世界遺産ライターの本田陽子です。

私は、世界遺産アカデミー(世界遺産検定主催)の研究員を経て、現在は世界遺産の魅力を伝えるライター・講師として活動しています。これまでに50ヵ国・200の世界遺産を巡りました。各地で培った経験をもとに、世界遺産の価値や登録の意義、そして観光や地域活性化との結びつきをテーマに執筆や講演を行っています。

そんな私が「日本の旅侍」に参画を決めたのは、その理念に強く共感したからです。

旅とは、ただ訪れるだけでなく、その土地の物語を知ることで何倍にも奥深くなるもの。世界中を巡る中で、私はそのことを強く実感してきました。お城も同じです。壮麗な天守や石垣を眺めるだけでなく、その背景にある歴史を知ることで、城はただの建築物ではなく、時代を語る存在へと姿を変えます。

世界遺産を例にとってみましょう。日本の城郭建築の最高傑作とも称される姫路城。白漆喰に覆われたその美しい壁は、装飾ではなく、防火や防御の機能を持ち、同時に徳川の威信を示すものでした。また、京都の二条城は戦うためではなく、権威を象徴する場として築かれ、豪華な障壁画や庭園が江戸幕府の力を誇示していました。

城の設計や防御機能がどのように進化し、どの時代にどのような役割を果たしたのか。そうした背景を知ることで、お城は単なる観光スポットではなく、歴史を映し出す「生きた教科書」となります。目の前の風景の意味を知ることで、旅はより豊かに、そして記憶に刻まれるものとなるでしょう。

「日本の旅侍」で実現したいこと

「日本の旅侍」は、歴史や文化の奥深さを伝え、旅をより価値あるものへと変えるメディアです。この場に参画できることを、心から嬉しく思っています。

これから特に力を入れたいのが、城巡りを軸にした「新しい旅のスタイル」の提案です。

お城巡りは、お城ファンだけの楽しみではありません。その魅力を知る人が限られてしまうのは、あまりにももったいないことです。
お城はただの歴史的建造物ではなく、その時代の政治や文化、さらには地形や暮らしを映し出す存在です。たとえば、城下町を歩けば、商人や武士たちが行き交った往時のにぎわいを感じることができますし、石垣や櫓をじっくり見れば、職人たちの知恵と技術の粋が詰まっていることに気づくはずです。

さらに、城巡りは歴史を学ぶだけでなく、旅の醍醐味を存分に味わえるものです。地形や気候が築城に与えた影響を考えながら歩いたり、地元の食や酒を楽しみながら当時の暮らしに思いを馳せたり。お城をきっかけに、その土地の文化や風土を深く知ることができるのです。

たとえば、彦根城を訪れるなら、堅牢な防御構造を学び、武家屋敷や近代建築を巡りながら、歴史の重なりを感じる。城下町の町家カフェで一息つき、夕暮れには地元の酒蔵で日本酒を味わう。高知城なら、幕末の志士たちが駆け抜けた町並みを歩き、カツオの藁焼きとともに土佐の地酒を楽しむ。こうして、歴史の中に身を置きながら、その土地の文化や味を五感で楽しむ旅が実現します。

また、全国にはまだ知られていない山城や廃城跡が数多く残っています。かつては戦略の要所として重要な役割を担っていたにもかかわらず、いまでは歴史の影に埋もれ、ひっそりと佇む城も少なくありません。
こうしたマイナーな歴史にも「日本の旅侍」ならではの視点で光を当てたいと考えています。なぜそこに城が築かれたのか、どのような戦いや政争に関わり、なぜその後姿を消したのか。その物語をひも解くことで、ただの石積みや遺構が、生きた歴史の証人として新たな姿を見せてくれるのです。

「日本の旅侍」を通じて、新たな旅侍を生み出す

旅をただの観光ではなく、知的好奇心を刺激し、日本の風土や精神性を見つめる体験にしたい人こそ、「日本の旅侍」 ではないでしょうか。

侍が剣を鍛え、己を磨いたように、旅を通じて知を深め、新たな視点を得る。そうして歴史や文化を学び、そこに生きた人々の思いに触れることができるのが、旅の醍醐味です。

「日本の旅侍」では、そうした旅をする人々を「旅侍」として迎え、この場で知識を得てさらに旅を楽しみたくなるようなコンテンツを発信していきます。私たちが届ける記事や情報が、「この城の物語を知りたい」「次はどこへ行こう?」という旅のワクワクを生むきっかけとなり、新たな旅侍を生み出す場になればと思っています。

「歴史を学ぶ旅」「文化を味わう旅」「好奇心を満たす旅」。城巡りを通じて広がる旅の魅力を伝えるメディアとして、「日本の旅侍」をさらに面白くしていければと考えています。

これからの「日本の旅侍」に、ぜひご期待ください!

本田陽子
プロフィール 本田陽子(世界遺産ライター) 世界遺産アカデミー研究員を経て、世界遺産ライターとして活動。日本遺産ソムリエの資格も持つ。50ヵ国・200の世界遺産を巡り、現地での体験をもとに文化や歴史の魅力を伝えている。世界遺産の価値や登録のメリット、観光との結びつきをテーマに、講演・執筆を多数手がける。 旅先で実際に見て触れた風土や文化を交えた話は、「リアルで臨場感がある」と好評。監修書籍に『絵本のようにめくる世界遺産の物語』(昭文社)などがあり、NHK(BSプレミアム・Eテレ「趣味どきっ」)やニュース番組・ラジオにもコメンテーターとして出演。 また、地域活性化や観光振興にも携わり、東京都選定歴史的建造物の企画・執筆、大分県豊後大野市の地域活性化プロジェクトの運営など、幅広い分野で活動している。 公式HP・SNSはこちら